心霊・幽霊系

実はその日、俺はずっと腹の調子が優れませんでした。
教師にも体調が優れない事は伝えていたのですが、教師は「薬を飲んでれば治るだろう」といった感じの事を言っていました。
まあ、俺自身も薬を飲んだりトイレに行けば治るだろう、と楽観視していました。
しかし、時間の経過と共に腹痛は酷くなってきていました。

そして委員会に向かう途中の階段で、俺は腹痛の為に歩くことはおろか、立っている事すら出来なくなりました。

ここまで体調が悪くなるのは人生初でしたので、かなり焦った記憶があります。
まさか腹痛で歩く事すら出来なくなるとは・・・と唖然としました。

さて、階段の踊り場で座り込んでしまった俺ですが、Kは俺を無視して歩いて行こうとしています。
俺は咄嗟に「腹が痛くて立つことも出来ない。悪いけど、先生を呼んできて欲しい」と言いました。

するとKは・・・これは、今も忘れる事が出来ないんですが、俺の方に振り向くと「そんなの、自分でやればいいでしょ!」と叫ぶと、俺を放置して行ってしまいました。

Kの、ドッシリとした後姿(Kは、かなりの肥満体型でした)が階段の上に消えてゆき、
俺は1人取り残されました。

『誰かに助けを求めたくとも動けない、腹の痛みで叫ぶ事も出来ない・・・。しかも放課後なので生徒の往来も無い・・・。もしかして、このまま亡くなってしまうんだろうか』、と本気で焦りました。

そんな感じで、しばらく踊り場でウンウン唸っていると、偶然にも別の男子生徒が通りかかってくれました。

彼は「どうした、具合が悪いのか?待ってろ、先生呼んでくるから!」と言って立ち去り、その後すぐに先生が駆け付けてくれました。

その後、病院に運ばれて診察を受けた結果、
俺は盲腸炎になっているのが判明し、即手術。
手術をした医師が言うには、盲腸は破裂寸前の状態になっており、あと少し遅ければ危険だったとの事でした。

今、こうして俺が書き込みが出来ているのは、先生を呼んできてくれた彼のお陰です。
本当に感謝してもし切れません。

退院後お礼を言おうとしたんですが、何年何組の何と言う生徒かも分からないので、とうとうお礼も言えずに卒業となってしまいました。
もちろん先生にも聞いたのですが「ちょっと分からないな・・・顔も良く憶えてないしなあ」と返されました。

今、あの時の事を思い出すと、ひょっとしてあの生徒は・・・?と考える時があります。
病気の人間を助けたとなれば本人も鼻が高いでしょうし、周囲の噂にだってなる筈なのですが、そういった事も聞きませんでした。

そういえば、彼が先生を呼ぶ為に立ち去る時、一瞬で目の前から消えたような気が・・・強烈な痛みで幻覚を見たのかも知れませんが。

幽霊というと、とかく恐怖の対象になりがちです。
が、果たして怖いだけの存在なんだろうか?と思います。

人間に怖い思いをさせる幽霊も沢山居るでしょうが、中には良い幽霊も居て、生きている人間を助けてくれる場合もあるんではないか、と。
ただ、それと同時に恐怖もあります。
先生を呼んでくれた生徒に、ではありません。

あの時、俺に対して「そんなの、自分でやればいいでしょ!」と叫んだK。
その時の形相が忘れられません。

俺は、Kのような人間が一番怖い存在だと思うのです。
あの、何かに取り憑かれたような顔、野太く冷徹な叫び声。
まあ、本当に何かに取り憑かれていたのかも知れませんが、今もあの顔と声はトラウマです。