学生時代、うちの研究室に伝わっていた不気味なお話です。

鏡の問題って知ってますか?

「鏡は、左右は逆に映るのに、どうして上下は逆にならないのか説明しなさい」

という問題です。

鏡の性質上、上下と左右に区別は無いはず。
確かに考えてみれば不思議な話です。
実はこれ、かなり有名な問題で、ブルーバックス(科学の啓蒙書)なんかにもよくトピックとして登場する話なのですが、著名な物理学者でもあまり明快な説明ができていないとのこと。
うちの研究室には、いつの頃からか、「この問題は呪われた問題である。明快な説明を与えた者には、体の上下左右も判別できないような無残な死が訪れる」という予言めいた話が伝わっていました。

ところが俺が入学する何年か前、ある学生が「明快に説明」してしまいました。
彼は「左右が逆」の意味を鋭く問うことにより、極めてわかりやすい方法で、「考え方によっては上下も逆である」ことを説明しました。

あまりにわすりやすい説明だったので研究室内で話題になり、助教授なんかも「◯◯君、命に気をつけろよ」などと冗談めかして言うほどでした。
しかしその1年後、その◯◯君は恋愛問題がこじれて自殺してしまいました。

彼は電車に飛び込むという方法を採ったので、彼の死体はまさに予言通りの状態だったそうです。
彼の説明は極めてシンプルなもので、特に理数系の人でなくても思いつく可能性があるので、もし興味をひかれても、あまり突き詰めて考えない方が良いようです。