日常に潜む怖い系

※都合上主語が「俺」だけど、これは親父の親しい知り合いから聞いた話。
親父の親しい知り合い=「俺」ってことで読んで。

何年前の話か忘れたが、知り合いのMが株をやりたいと言ってきてアドバイスしてやったのが事の始まりだった。
Mは地元の工場でコツコツと働いてきたが、貯めた金で相場をやるのが夢だったらしい。
会社の早期退職に応募して仕事を辞めたのが53歳のとき。
俺は一応止めたのだが、Mは大手証券会社で口座を開き、信用まで申し込んでしまった。

当初資金3000万と退職金の一部の500万でスタート。
後で信用を開いたことを聞いた俺は、最初の1年間は維持率が決して100%を切らないようにと念を押していたのだが・・・。

で、口座開いてから3ヶ月ぐらいたったある日。
お茶でも飲まないかということでサテンで談笑したのだが、状況を聞くとトントンだという。
何を買っているの、と聞くとトヨタやソニー、新日鉄など日本を代表する優良企業ばかり。
まあ最初は皆そんなもんだろうと思いながら話をしていた。

俺:「そのうち上手くなれば利益も上がってくるだろう。取りあえず林輝太郎でも読んでみたら」
※林輝太郎(はやしてるたろう)は日本の相場師。

で、その日はそれで別れたのだが、今度は半年くらい音沙汰がなく、俺も気になりかけたころにMから「久しぶりに話でもしないか」と電話がかかってきたんです。
で、会って話を聞いてみると、「いやぁ、株って簡単だよな。ここ半年でかなり儲かったぜ」と言う。
セルシオの新車を買ったというのでさすがに俺も興味が湧いてきて、一体なんの銘柄でそんなに儲けたんだと聞いてみた。

そしたら返ってきた答えが、こともあろうに兼松日産農林。(おいおい泰山かよ)
あんまり覚えていないが、その頃が4000円を超えてきたころだったと思う。

よくよく話を聞くと、3000円を越えてきた頃に初めて買って、見る見る上がるものだからどんどん現物買い増して信用で玉回してたみたい。
その後最終的には株価5000円超えたんだったかな。
また1ヶ月ぐらいして、4500円超えてきたときに、俺もさすがに心配になってきて、「そろそろヤバイよ。もう十分儲けたんだから手を引いた方が賢明だよ」とアドバイスしてやったのだが、「まだ行けると思うけどなあ。4000円の玉がしこたまあるから平気平気」って言うから、投資は自己責任だし俺もそれ以上強く言うのもかえってアレかと思った。

で、5000円超えたあたりで、さすがに今度は証券マンの方から電話かかってきて「Mさん、そろそろヤバイっすよ」とかなんとか言ってきた。

俺の記憶だと当時のM氏の現物がトヨタとかその辺が2割ぐらいで、後の8割が平均単価4,800円ぐらいの玉が1万5千株、信用の玉が2万株ぐらいだったと聞いた。
で、証券マンがうるさいもんだからMがブチ切れしたらしく、「維持率あればいいんだろうるせーな」とか言って、老後の蓄えの定期預金解約して1000万ブチ込んだんですよ。

それから数日してプチ暴落があって、さすがにビビっていったん現物だけ残して信用分はブン投げたんらしいんだけど、こともあろうにちょっと戻したところで信用ほぼ全力。
そこからはもうご存知のように一直線で急降下。

案の定「追証貸してくれ」のラブコール。
俺だって1年や2年の株暦じゃないから、安易に追証なんて貸せない。
「現物も全部ブン投げても払えないのか?とにかく親族とか当たってみろよ」としか言えなかった。
後で分かった話だが、気のいい奴があまりのMの状況を見かねて500だけ都合してやったが、結果的にはとりっぱぐれた。

後はもう想像してください。
ラブコールから1ヶ月か1ヵ月半くらいしてからの話だが、突然家から蒸発したらしく、家族が警察に捜索願いを出してた。
警察の方も事情が事情だけに、懸命に捜索してくれたらしいんですけど・・・・・・。

うちは関西だったんですが、2週間後に山梨県警から府警の方に連絡が入ったらしいです・・・。
確認しにいった親族がいうには、鬼のような形相でこっちを睨み付けるように死んでたらしい・・。
方法は実は俺も聞いてないが、首吊りではなかったらしく、悲惨な死に方だったと聞いた。
当然夏の熱い盛りで、2週間もほったらかしにされた死体は見るに耐えなかったと・・・。

まあこんなの氷山の一角なんでしょうけど・・・。
遺族も一時期かなり取り乱したようで訴える、とか騒いでたけど弁護士にたしなめられてそれっきりみたい。

親族の人が「あの死に顔だけは忘れられない。鬼のような形相というのはこういう顔を言うのですね」って言ってた。