不思議系

私が見たのは駅のホーム、線路内にポツンと立っていました。
男か女かも分からない、真っ黒ではなくテレビ画面の砂嵐のような色の黒っぽい影。
足は膝辺りから下がなく、頭の顔面に当たる部分は大きく抉られていました。
今となっては異常だったと思うのですが、その時の私には余裕がありませんでした。

ソイツはホーム下の線路内に電車と対面する位置に背中を丸め腕を顔の辺りでまで上げ、肘を軽く曲げ掌を外側に向ける格好で立っていました。
私は黒い人と言うのをその時は知らず、「何で線路内に人が居るの?そろそろ電車来るよ、危ないよ!?」と驚きましたが、他の人は何の反応もしていませんでした。

そのうち電車が到着する、というアナウンスが流れましたが、その黒いのは動こうともしません。
「だ、誰か助けないの?このままだとこの人轢かれちゃうよ!」とパニックになりましたが、他の人はその影が見えてもいないようでした。

ブレーキ音と共に電車がホームにやって来ます。
轢かれる!!と私は思わず目を覆いました。

しかし悲鳴が上がる訳でもなく、普通に人々が電車から降りてきました。
「え?気のせいだったの?見間違い?」と思って見てみると影はまだ立っていました。

電車の床から頭と手だけが突き出ていて、グルンッと顔を向けコチラを見ました。
目も鼻も口も無い顔、しかし私の事を確かに「見て」いました。

ひっ!と息を飲んで固まっていると後ろから人がぶつかり「乗らないんだったら退いてくれ」と声を掛けられました。
振り向いて「す、すいません」と謝ってもう一度電車の方を向くと、丁度ドアが閉まるところでした。

アナウンスと共に電車が発車すると、その影も居なくなりました。
しかし私はドアが閉まる直前に見てしまったのです。
その黒い影が、1人の乗客の足にしがみ付いているのを。

あの乗客はどうなったんだろ・・・・・・今でも気掛かりです。