幼稚園児くらいの頃、鬼太郎の妖怪図鑑的な本を読んで「家鳴り」が妖怪として伝えられてる地域もあるのを知った。

小柄な鬼が家の大黒柱にしがみついて揺さぶる絵が、他のおどろおどろしく意味不明な妖怪たちの絵に比べると分かりやすい上にそんなに強くなさそうだし、何より実害がないので「妖怪ハンター」(笑を職業志望にしていた当時のバカな俺はやなりをたおそうとおもった。

しかし実際、倒そうにも実害もなければ実態もない相手をどうしたものか。
そこで当時の俺が考えたのは「やなりをゆびさす」という方法。
たぶん「じぶんがだれかにゆびさされたらいやだなあ」くらいの感覚でそんなマイルールを作ったんだろう。

パキ、ミシ、音が鳴るたびそちらを指差す。
家鳴りはどんどん増えてゆく。
しかも、家鳴りが鳴る前に適当に指差した方向からも鳴るようになってきた。

集中しすぎて細かい音まで拾ってしまったせいかもしれない。
予知能力スゲエ!と勝手に興奮する俺。
そして音の間隔は狭まる。

「60分」「30分」「1分」みたいな時間の間隔がまだ身についてない時期だったが、家鳴りの頻度がテレビのCMが切り替わるくらいの頻度になったのを覚えてる。

少し不気味に思えてきたのと、少し子供らしい疲れや飽きが来たのと、あと余裕のある態度を家鳴りに見せつけたいという気持ちが相まって、かったるいぜ~的なことを言いながら両腕を上げて大きく伸びをした。
つまり天井を指差す形になる。

その途端、パキメキミシバキバキバキバキ、ドン!!と天井が割れたかと思うほど大きな音が鳴り響き、その破壊音に並々ならぬ怒気を感じた俺は腰を抜かして蹲って全力で家鳴りさんに謝り、その時チビッたズボンの件で母親にも謝った。