子供の頃、曾じいちゃんが建てた古い木造の家に住んでたんだけど、1階奥の8畳が仏間兼客間になってたんだ。
ところが、この客間に泊まった人が1人残らず1年以内に死ぬ。
それも、まだ40~50代で元気だった人達が、事故や脳梗塞でポックリ逝っちゃうんだ。

まあ偶然だろうとあんまり気にしてなかったんだけど、じいちゃんの通夜の晩に、坊さんを呼んでその部屋でお経を上げてもらったら、読経を終えた坊さんがゆっくりこっちを向いて、「床の間の柱、逆さ柱ですね」と言ったんだ。

逆さ柱というのは、普通とは逆に、木の根っこを上にして立てる柱のこと。
『土に還る』という意味で、寺や仏間だけに使われるものなんだって。

パッと見は普通の柱と同じでも、よく見ると木目の向きが違うらしい。
教えられてもオレにはよくわからなかったけど、お坊さんは見慣れてるから分かったんだろうな。
たぶん、仏間だからというので、棟梁が気を利かせて逆さ柱にしてくれたんだろう。
でも、家族の誰もそのことに気づいていなかったんだよ。

「縁起のいいものではないから、この部屋では寝ないほうがいい」と坊さんに言われて、それからはお客さんには別の部屋で寝てもらうようにした。
以降、うちに泊まった人が亡くなったという話は一度もない。