私が保育園児だった頃の話。

両親は共働きで朝早くから出ていたので、私を保育園まで送るのは当時存命であった祖母の役目だった。
祖母が化粧をしている間に暇を持て余した私は、しばしば『忍者ごっこ』で遊んでいた。

なんて事は無い、祖母の部屋のふすまを開けてその前の廊下を走って往復するだけの遊びだ。
ドタドタ廊下を走りまわっては、「今の見えた?」などと祖母に聞いていた。

そもそも祖母は廊下に背を向けて化粧をしていたため、私の方を見てはいなかったのだが、飽きもせず走り回る私に付き合い、「見えなかったよ。今日の忍者さんは足が速かったねぇ」などと言ってくれていた。

ある日、祖母から「忍者ごっこをやめなさい」と言われた。
理由を聞くと、床が傷むとか、仏間につながる廊下だからうるさくしたらいけないとか、そういう理由だったのだが、なかなか言う事を聞かない私に祖母はこう言った。

祖母:「そこの廊下は私ちゃんが忍者ごっこをしていない時でも、時々誰かがおなじような事をしている。私ちゃんは廊下を行ったり来たりするけど、その忍者はいつも仏間の方に行ったきり帰ってこない。私ちゃんもいつかそうなってしまう気がして」

そういえば、なんでこんな遊びをしようと思ったのかすら、私には分からない。