小学生の頃の話。

祖父母の家は田舎のそこそこでかいお屋敷で、家の周りをぐるっと漆喰の壁で囲まれてたんだ。
道路からは田んぼの畦道を通って裏口から入るのが最短ルートなんだけど、裏口の門の近くの漆喰に右半身がめりこんだ状態の女性が昼夜問わずにいたんだ。

黒髪で白っぽい長袖ワンピースみたいな格好で全体的に薄い。
昼間は我慢できるんだけど夜はまじで無理!って感じだった。

でもある日、じいさんがグズる俺にキレて漆喰の壁をバンバン叩きながら「どこにそんなんがおるんじゃ!わしにゃ何も見えんぞ!」とか言われた。

その叩いてるとこがまさにめり込み女がいる場所だったんだけど、じいさんが叩くたびに壁にめり込んでいって最終的にいなくなった。

薄いから表情は読めなかったけど、叩かれるとビクッとなりながらめり込む様が面白くて笑った。

じいさんも笑ってた。

高校生になって、なんとなくあの日なんでキレたのか聞いてみた。
じいさん曰く、「おまえの母さんも子供の頃に同じこと言っとったんじゃ」とのこと。

母さんの時はいろんなとこ叩いたらしい。
俺の前で叩いた場所が母さんが泣き止んだ場所だったから覚えてたんだってさ。