3年くらい前の話。
田舎の大学生だった俺は移動は常に原付だったんだけど、バイト先と当時住んでた学校の寮との間には街灯もほとんど無く、夜は完全に真っ暗闇になるけっこう怖い坂というか山道がある。

で、とある日のこと。

バイトが終わって同僚の仲がいい子とメシ食って、そいつと別れて帰る道の途中のことだ。
時間は午前二時位だったと思う。

いつものように件の坂道を登っていたら、だんだんと原付のライトの付きが悪くなってきた。

最初はチカチカと点滅するように不規則になって、その内にゆっくりライトの光が弱くなって、ついには完全に消えてしまった。

幸い月が出ていた晩であったため、なんとか道は見えないこともない。

霊感とかは一切ないんだけど、ホラー映画とかはかなり苦手で人一倍怖がりの俺はとにかく早く帰りたくて仕方がなかった。

そう思っていた矢先、今度はエンジンがおかしい。
キュルルル・・・プスンと音を立てて完全に止まってしまった。

寒気と恐怖を覚えた俺はバイクから飛び降りて両手でハンドルを持ち必死に坂を押して走っていった。

その間常に右手はエンジンをかけようとひねり続けてた。
なんだか背中に気配を感じたがそれどころではなかった。

で、そうこうしている内に山道も終わりに差し掛かり、寮が見えてきた(その坂道を下ったすぐそこに寮はある)。

すると寮の部屋の光が見えてきた途端急にエンジンがかかり、ライトもばっちりついた。

右手をめいっぱい捻ってその日は急いで帰って寝たんだが、次の日原付をバイク屋に持っていったが全く何も問題はないという。

だいぶ後に友達にこの話をすると、その山道は首刈り峠と言うそうで、詳しい所はわからないが昔囚人の首を刎ねる場所だったとか何とか。

ちなみにエンジンが止まった時って急にエンジンが切れた感じじゃなくて、なんだか急に原付自体が重くなった感じだった。

やたら重い荷物を引っ張ってるみたいな感じでエンジンは動いてて、右手も捻ってるのにヨロヨロとしか進まないんでついには止まったって感覚でした。