霊体験らしきものは、私が高校時代に頻繁に体験しました。

私は学校まで自転車通いだったのですが、入学祝いに新品の自転車を買ってもらい、機嫌よく7キロほどの道を往復する毎日でした。
学校にも慣れた頃・・・私は、盛んに「空耳」を聞くようになりました。
授業中、通学中・・・誰かと話をしていると、割り込むようにささやく声がするのです。
それも決まって、左耳で聞くのです。

それでも、鳥肌を立てるくらいで、実害はないものだと気にせず暮らしていたある日。
下校途中に、友人と大声でしゃべりつつ自転車をこぐ私の耳元で「よっこいしょっと」と、しゃがれた声が聞こえました。

驚いて自転車を止め、あたりを見回しますが、あたりは一面の畑。
声の主は見当たらず、傍にいるのは怪訝に私を見る友人のみ・・・。
ちょっとゾクッとしましたが、構わずそのままペダルを踏みしめたその時、ガクン!と言う感じがして自転車の前輪が少し浮き上がりました。

え?と思った瞬間、ペダルがいつもとは全くちがう重さになりました。
必死でこいでも、すごい重さで平地を並んで走らせている友人の自転車に度々引き離されるのです。

「どうかしたの?」と尋ねてくれる友人に、本当のことは話せず、ただ、「疲れてるのかな・・・」と誤魔化しながらようやく自宅にたどり着きました。

いつもなら在宅している母も、用事で外出しており間が悪いなあ、と思いながら自分の部屋に入りました。

それからレンタルしていたCDを返しに行こうと、ベッドの脇を通った瞬間、背中をドシン!と押されるように、ベッドに倒されてしまいました。
それから、どうにも体が動かず、頭はガンガンと痛むのです。
背には何かが覆いかぶさっているような重み・・・。

パニック状態で、そのまま20分ほども過ぎた頃、隣の家のおばさんが、うちを訪ねて玄関のベルを鳴らしたのと同時に私は開放されました。

ほっとして、腕時計を見ると、綺麗だった腕時計のガラスには無数の小さな傷が付き、一瞬曇りガラスかとも思えるような、変わり果てた姿になっていました・・・。

あの時は本当に血の気が引きました。