マイナーなテレビで伊集院光がした話。

ラジオの企画で急遽、百物語をやろうって話になった。
本当に百の怖い話をして、ろうそくを消したらどうなるのか?
ラジオのスタッフやら怖い話をする演者やらを何とかかき集めて、二十人の演者に対して一人5本の怖い話があるのも確認して、貸して頂いたお寺の本堂で百本のろうそくに火を灯して、いざ、録音がはじまった。

一人怖い話を終えて火を消し、また一人怖い話を終えて火を消す。
実のところ、ラジオの業界は仕事の時間帯がバラバラなので、この収録も結構遅い時間にやっている。

まぁ、何か出そうでこれはこれで良い。
だが、仕事が終わってすぐの人もいたり、収録時間が長くて居眠りする人もいたりと、途中からだんだんと話す内容の質が下がってきた。

しまいにはふざけ半分で話すお調子者もいたりで、流れがグダグダになりはしたけど、なんとかみんな怖い話を続けて、とうとう残るろうそくの火は一つになった。

最後の演者が話を終えて、ろうそくの火を、フッ、と消した。
何も起こらない。

そうそう上手くは事は運ばないなぁ・・・と思っていたら、一人の演者がこう言った。

「え?何で終わってるの?俺トリだから凄い怖いの用意してたのに」

でも、確かにろうそくは百本全部、吹き消されている。

「誰かが間違えて2つ消したのかな?」などと憶測されたけど、もともとは企画のため、この一連の流れは全て録音されている。
これを確認しようという話になり、時間があるメンバー全員でラジオ局に戻った。

早速録音されたテープを聞くと、しっかりと一番最初の人の話が録音されていた。

話が変わるたびに、「この話は僕がしたよ」「この話は隣にいた◯◯さんがしてました」と演者が確認していく。

半分くらいたった時だったかな。
すごく小さい声で、ボソボソっと話してる声が録音されていた。

演者の一人が言うには、「あー、これ俺覚えてるよ。誰が話してたか知らないけど、聞き取りづらいし眠気誘うしで、俺寝ちゃったよー」と。

他にも何人かの演者が、聞き取れなかった話があったことを覚えていた。
たださ、やっぱりみんな、この声の主が何と言ってるか気になった。

幸いここはラジオ局。
しかも音声さんやミキサーさんや、音のスペシャリストが揃ってる。
彼らが上手くノイズを消したり音量・テンポを調節したりして、そのボソボソ声が何を言ってるのかわかるようになった。

みんな集まってそのテープから流れる音声を待った。

そこから流れてきた。
『最近の話なんだけどさー。俺、死んじゃったんだよね』

スタッフ、演者の誰にもあてはまらない声で。

後日、収録場所になったお寺に確認に行くと、収録当日のお堂には、納骨される前の遺骨が安置されていたそうです。