ある男が超能力を手に入れた。
それは彼の一動作によって『願いごとが叶う』というものだった。

たとえばポケットから手を出すと、その手には宝石がにぎられている。
指を鳴らすと絶世の美女が部屋のドアを開け現れる、というように。
願うだけではかなわないので、これは衝動的な願望を制御することができた。

そして彼はその能力をもって、知力、品性、財力、なんでも手に入れた。
しかし彼は即物的な願いに飽き、理想を求めるようになった。

その知力をもって歴史を学んだ結果、彼は人間のあまりの愚かさに絶望した。

彼は願った。

「私が目を開けたら、人間たちの愚かさが、なくなっているだろう」

それ以来、彼は、盲人となってしまった。