小学二年の夏の話。

学校の校庭から直接行ける山の中で友達とかくれんぼしていた俺は、いつも使ってる立ち入り禁止の隠れ場所に行った。
当然、立ち入り禁止だからといって探さない小学生など居なかったが、その場所は幾つかの要素が重なって、鬼の様子を伺いながら隠れる場所を変えてやり過ごす事が出来る、知ってる奴には最高の隠れ場所だった。

その日も俺は岩の裏に隠れたり、その傍にある木の露出した根っこを伝って下りて横穴に入ったり、逆に根っこを掴んで這い上がったりと、かくれんぼを楽しんでいた。

そろそろ全員捕まった頃だろうと思った俺は、横穴から這い出て、例の根っこを掴んで、引っ張った。
その瞬間、自分の体重を支えていた手応えが無くなった。

ヤバい!!と思った時にはもう遅い。

根っこは真後ろにブン投げるような形になったので、それには当たらず、崩れた土というか砂をしこたま顔面に浴びるだけで済んだが、その少し奥に見える岩が、ゆっくり傾きながら俺の方へ落ちてくるのを、妙に長く、真後ろへ倒れ込みながら見ていた。

「あ、これ死ぬな」と思った瞬間、誰かが横から出てきて岩を一瞬受け止め、そのまま体をずらしながら右斜め下に転がしてくれた。(割と真横転がってったから結構怖かったが)

尻餅と両手を後ろに着いたまま固まってた俺の方を向いたその人は、なんつーか、包帯の人だった。
包帯のインパクトが強過ぎて服装はうろ覚えなんだが、上は白のロンTに下はジーパン、フード付きの黒いベンチコート(?)みたいなのを羽織っていて、ただ下駄を履いてた事だけは確実に覚えてる。

何せ顔から手から下駄履いてた足まで、全身包帯で隠れてたんで、生身で見える所は両目だけ。
包帯は黒やら茶色やら黄色やらで汚れてたんだが、何故か傷に当てて汚れた包帯を見るような不快感は無かった。

その包帯さんが右手で唐突に自分で自分の胸を叩いたと思ったら、何かガッツポーズっぽい事をしてきた。
確か俺はアホみたいに何度も頷いて返した。

そしたら包帯さんも二回くらい頷いて、すげえ勢いで回れ右して岩が転がり落ちた方に走り去っていった。
その走り方が、足の裏にバネでもついてんのかって感じのトーン、トーン、トーン、って感じの軽さで、少なくとも、膝のクッションを使って下り坂を少しずつ飛び降りる、みたいな走り方ではなかった。

包帯さんは落ちた岩の所に着くと、岩に右手を当てて、岩が安定してるか、力を加えても転がらないかどうか確かめてるようだった。
一通り確かめ終わったんだろう、俺が見てるのを気付いて手を振ってくれた。
多分俺も手を振り返したと思う。
そのまま、またあの軽いトーン、トーン、トーンって走り方で、山道ではなく山の中の方に入って見えなくなった。

次の日、現実と夢がごっちゃになったんじゃないかと疑った俺は、もう一度その岩を確かめにいった。
岩は間違いなく、転がり落ちた場所の方にあった。

なんか中途半端な話で申し訳ないが、俺が本気で死ぬかと怖い思いをした話って事で。
包帯さん、ありがとう。