知人Aから聞いた話。

Aは神奈川県内の高校を卒業後、N県にある大学に進学し、2年次までは寮で暮らしていたのだが、3年次からはもう一人暮らしを始めようと思った。
とはいえあまり親にお金をかけては申し訳ないからということで、格安の物件を探し、築ウン十年もたった古い木造アパートで暮らし始めた。

ただ気になったのは部屋の柱一ヶ所にお札が張ってあったこと。
しかし心霊や迷信など気にしてなかったAはそんなお札なんて剥がしてしまった。
彼は理工学部の大学生で研究が忙しく、ほとんどアパートで過ごす時間はなかった。

あるとき部屋の隅に女の人の長い髪の毛が落ちているのを見て、「あれっ、こないだ掃除したばかりなのにおかしいなぁ」と思いつつもゴミ箱に捨てたらしい。

またある日、部屋の隅に長い髪の毛が落ちているので、「どっか部屋の隙間でもあってそこから入ってきてるのかなぁ」と思いつつもゴミ箱に捨てた。

またあるとき、ちょうど夕方西日が窓に当たる頃、ゴロンと床に横になったときに何気なく窓を見ると、ガラスに自分のより小さい手型がついているのをみつけ、「何でこんな所にこんな手形があるんだ?ここは2階だから誰かが外からつけたんじゃないだろうけど」と思いつつも気にせずそのまま寝付いてしまった。

Aは寝起きて、目覚めたのだが、もう辺りは暗く、金縛りにあっているのか自分の体を動かすことが出来ない。
そして自分の足元の方から、スーッ、スーッ、スーッ、という音がする。
その音はやがて自分の顔に近づき、見ると、白装束で髪が長く不精に垂れ流してて顔の見えない女が床を這っている!!

その女が自分の顔を通過する。

女の目だけが見えた。

凝視して今にも飛び出しそうな目!!
女は通過し、部屋の隅を這っている様子。

やがて自分の体に力が入り、ワアーァ、っと声上げ電気をつけ,一目散にドアを開け、近所に住む友人の元に駆けていった。

友人のところで一晩明けて、すぐに不動産屋に問い詰めたところ、幽霊の類の話は聞いたことがないという(実際自分たちが知っている話を隠していたのだろうか?)。

そこで近所の人に話を聞いてみたところ、3,4年前にあそこの部屋で女性が恋愛のもつれからか首吊り自殺を図ったらしい。

当然Aはそのアパートを解約、別のところに引っ越し、いまは某電気メーカーで働いている・・・。