私の親父に聞いた話。
親父に関する逸話は家にまつわる怖い話で出しているが、これは山に関するモノなのでここに書かせていただきます。

彼はよく一人で登山を楽しむのだが、15年ほど前、四国のとある深山に行った折りのこと。
その山には何度か行ったことがあるのだが、いつも深夜近くまで藪のような獣道を漕いで歩き、電力会社の小屋に寝泊まりする。

その日も真夜中近くに到着して、いつも通り土間の真ん中に寝袋を広げて休もうとした。
しかし、うとうとしかけると、なぜか遠くから女の子が数人で談笑する声が聞こえてくる。

「お散歩かいな、ものすごい山奥の、しかも真夜中にモノ好きがいるもんやな」などと考えて寝ようとするとまた声が遠く近くに聞こえてくる。
落ち着かないながらも強引に目を閉じると、今度は背中をごろごろと圧されるようで寝苦しい。

平らな土間の真ん中に寝ているのに、なぜか背中に当たるモノがある。
おかしな胸騒ぎがして寝袋をめくり、その下の踏み固められた土をそこらにあった板で掘ってみた。

するとオランダかどこかの絵皿が一枚、地中深くから出土したそうな。
ピンク色の地に白い帽子をかぶり、長いスカートの女の子の絵が手書きで描かれたものだが、それを掘り起こして「なんか得した気分♪」と安心して眠り、しっかり持ち帰って飾っていた親父。

その皿はいまだに実家の食器棚の下にしまってある。