友人は人形が苦手だ。
ところが彼女の家にはフランス人形があって、友人はそれを随分嫌がっていた。
小さい頃に親が買ってくれたものなので、どうも捨てにくくて放置しているそうだ。
だが、別に不気味な人形じゃない。
ごく普通に可愛らしいお人形さんだ。
だから、「持ち主に嫌われちゃって、可哀相な人形なのかもしれんねー」と友人自身も言っていた。
それでも苦手なもんな苦手らしいけど。

ある日、久々に帰省してきた友人の家に遊びに行ったら、その人形が置いてあった。
でももう古いせいで、人形は髪がぼさぼさになり、片目が壊れ、ドレスにもホコリが付いていた。
なんか可哀想だなと思っていたら、友人が・・・。

「あー、やっぱりあれ気になる?直さないかんのかなあ、あれ・・・」

友人は手先が器用で、アクセサリーなんかも自分で作っちゃうような人だ。
なので何か壊れている物があると、無条件で改造&修理魂がうずくらしい。
でも相手が人形なので、どうも気が乗らないらしかった。

しかし、それを人形は聞いていたらしい。
人形、次の日から張り切った。
なんと、人形嫌いの友人の夢枕に日参し、友人をじ──っと見つめ始めたのだ。
しかも雰囲気がじょじょに重ーく暗ーくなっていく。
表情も恨めしげになっていく。

しかし友人も負けちゃいない。

「あーそのうちなw」

「気が向いたらなww」

「向かないだろうけどなwww」

とのらりくらりとかわし続け、休みが終わったのでタイムオーバー。
結局友人は修理せずに帰っていった。

次の休み。
帰省してきた友人は、ものの見事に人形のことは忘れていた。
しかし人形は覚えていたらしく、再び友人の夢枕に押し掛け第2ラウンド開始。
だが思い出しても、一向に修理しようとしない友人。
友人の家の人はほぼゼロ感で、友人だけが昔から色々見たりしてる。
だから、人形にしてみたら訴える相手が友人しかいない。

あまりに相手してもらえないので、ついに人形は強硬手段に出た。

昼間、友人が気分悪くなって横になってた時に(これはただの貧血)、夢枕に押し掛け、金縛りにし、肩にぐぐっと乗っかったのだ!
そして顔をどアップで見せつけた!!

驚いて目を覚ました友人は、起き上がって、「ッメエ・・・寺持ってって燃すぞコラァ!!!」と、叫んだ、巻き舌で。
自分は横でマンガ読んでたんだが、めっちゃびびった。

しかしさすがに可哀相だと思ったのか、友人は人形の修理を始めた。
目は人形の構造上直せなかったらしいけど、髪もドレスも整えられ、他に壊れていたところも直し、顔も拭いてもらって、人形は一応きれいになった。

そして最後に「礼も詫びも要らん。要らんから二度と私の睡眠を邪魔するな。今度同じことやったら燃すからな!!!」と念押しして、人形の修理は終了した。

「だから人形は嫌いなんだ・・・」とぶつぶつ呟いていた。

彼女の性格なら次回は間違いなく燃すと思う。
二度目は無い。

後で、友人ではなく私の夢に、泣きそうな顔の人形が出てきて、「怖かった・・・(><)」と言ったのは、気のせいだったと思いたい。