小学生の時、下校途中で「人生の前半と後半、辛いのはどっちにする?」と声が聞こえたことがある。声の高い男性のような声の低い女性のような、不思議な声だった。

好きなものは後にとっておく性格なので、「前半辛いのがいい!後半が幸せのがいい」と口に出したんだけど、まわりに誰もいなかった

それから成人するまで精神異常者の父親に軟禁されたり、母親にイビられたり持病が悪化したりストレスで耳が聞こえなくなったりと、物凄く苦労した。

同時に、さっさと県外に逃げた5つ上の姉が自由気ままに生活しているのが羨ましかった。

姉は逃げたくせに親に金の無心をし、親も親で姉には家賃も払った上で毎回10万近く援助していた。
私は毎日プレハブに閉じ込められて両親に奴隷扱いされているのに、姉は愛されて自由に暮らし浪費し放題だった。

そして私が成人して数年後、両親が自損で死んだ。
姉はさんざん親に世話をかけておきながら「田舎つまんない、葬式あげといて」「遺産はちょうだい」と、姉と私の人生が逆転したのはそこからだった

私は喪が明けてから結婚、持病は治りきらないけど、子供も産んでパートしつつ笑顔で普通に暮らせるようになった。

姉は遺産を過大に見積もって仕事を辞めて地元に戻ったが、家は賃貸だったから引き払ったし、親の預金は姉に貢いでいたから200万あるかないかで葬式代を引いたら無くなった。
保険金だけ姉妹で分けておしまい。

姉は地元の祖父母の家に転がり込み、パートしながら「こんなはずじゃなかった」「40近いのにまだ結婚もしてない」とぼやいきながら暮らしている。

私が小学生の時に聞いたあの声、姉も聞いたことがあるそうだ。
当時の姉は「辛いのなんか嫌だから、今幸せにして!」と言ったらしい。