友人の話。

彼女は時々、変わった夢を見るという。
と言っても特に内容が変わっているわけではない。
夢の中で気がつくと、彼女は実家の元自分の部屋に立っている。
部屋の様子は記憶にある通りで、調度品などが手に取れる程リアルに感じられる。

別に何かすることもなく、決まってウロウロと部屋をうろついて外を見る。
これまた決まって大きな満月が天にかかっている。
そして月を見ると目が覚める――そういった夢らしい。

中学生になり実家を離れてから、この夢を見るようになったそうだ。
どうせならもっと面白い夢がイイなぁ、と彼女自身は思っていた。

大学生になってから里帰りした時のこと。
久しぶりに昔馴染みと飲んでいるうち、肝試しをしようということになった。

友人「かなりの率で幽霊が出る心霊スポットがあるんだよ」

友人はそう言う。
集まっていた皆がそういう類いの話を好きだったらしく、行こう行こうとなった。

件の友の話では、町外れの山にある古い大きな家がそのスポットらしい。
満月の夜、部屋の中に透き通った女が出るのだと。

まさかまさか、とドキドキしながら案内された先は。
紛うことなく彼女の実家だった。

「今日は出ないなぁ」

「満月じゃないからじゃないか?」

皆はそう言いながら、実家の窓を眺めている。

「たぶん、それ私」

・・・という一言は、結局最後まで言えなかった。

今でも彼女はたまにその夢を見ている。
いつものように部屋をうろついて外に目を向けるのだが、最近は月を見る前に道路を確認するようになったという。

時には、彼女の部屋をじっと見ている者がいるのだそうだ。

「知り合いだったら嫌だなぁ」

そう彼女はぼやいていた。