そこは付近一帯、紅葉しない山だが、その家だけは別だという。

秋の一日だけ、山の中にぽつんと建っているその家は、紅葉した木の葉で埋もれそうになる。
翌朝には、きれいさっぱり木の葉は消えてしまう。

何かの祟りや罰なのか、あるいは褒美なのか、それさえ分からないが、とにかく毎年、木の葉が降り注ぐ。

庭に立ち、空を見上げると、高い空の彼方からひらひらと、しかしまっすぐに真っ赤な木の葉が降ってくるのだという。
遠くからは、のろしのように、赤い煙が立っているように見えるらしい。

すでに書いたように、由来は不明だが、大規模な山火事があって以来、その家だけに木の葉が降り注ぐようになったという。

厚さ20センチにもなるというから、相当な量だろう。
とはいえ、木の葉がどこから来るのか、誰も知らない。

木の葉が降り積もると、何やら小さな動物がその中を動き回るが、その姿をはっきり見た者は、いない。

由来を知る先代の当主が数年前に急死したため、現在の当主は深い事情を知らずに、この奇妙な出来事と向き合っている。