これは私が高校生のときに体験した話です。
そのころの私は毎日のように部活に励んでいて、帰りが遅くなることもしょっちゅうでした。

その日もいつものように部活が終わり、20時頃でしょうか?一人で自転車をこぎながら帰っていました。

田舎だったので、まだそれほど遅くない時間とはいえ、車通りはほとんどなく、電灯の明かりもまばらで、今思うと寂しい道だったのですが、そのころの私にとっては毎日通りなれた通学路、今日の晩御飯なんだろ?などと呑気に考えながら、帰宅を急いでいました。

そしてある一本道に入ってしばらくして、私は奇妙なことに気づきました。
そのとき私は、二車線道路の右端を走っていたのですが、その左端、つまり逆側に、こちらに背を向けた人が立っているのです。
背格好からして、それは男性であることがわかりました。

それだけなら普通の通行人です。
しかし私はさきほどその背中を見ながら、その人を追い抜いたばかりなのです。

そのときは見間違いかな・・・と思い、再び追い抜いたのですが、しばらく走っているとまた、暗闇の向こうからその背中が見えてくるのです。

もちろん私に、追い抜いた後に振り返る勇気などあるはずもなく、物凄い勢いで自転車をこぎながら、ひたすらそちらの方を見ないように、見ないようにしていました。

しかしながらやはり、視界に入るのは避けられません。
震える手でPHS(買ってもらったばかりだった)を取り出して助けを求めようとするも圏外。
無我夢中で横道に入り、少しでもにぎやかな通りに出ようと必死でした。

遠目にコンビニを確認できたころには、もうその背中も現れることもなくなっており、PHSの電波も良好。
いまだ震えの残る手で母に電話し、そのコンビニまで迎えに来てほしいと頼みました。

そしてコンビニに到着し、気でも紛らわそうと思って店内を物色したあと、雑誌コーナーで雑誌を読んでいたのですが、やはりまだ恐怖心が残っているせいか、全く内容が頭の中に入ってきません。

ぼーっと雑誌をめくっていたそのとき、ふと気配を感じ、雑誌から目をあげた私の視界に飛び込んできたものはコンビニのガラスにぴたっとくっついてこちらを凝視している男性の姿でした。

直感的にその男性=先ほどの後ろ向きの男性と理解し、「逃げなきゃ!」と思ったんですが、体が恐怖のために硬直して動かない。
やばい!と思ったその瞬間に、コンビニの自動ドアが開く音がしました。

母が到着したのでした。

それからは、しばらくの間、帰りは誰かに迎えに来てもらうか、友達に一緒に帰ってもらうかどちらかになり、決して一人で帰ることはなくなりました。

今でも夜その道を通るときは、車に乗っていてもビクビクします。
そういえば、その後、同じ道で、車に追いかけられたこともありました。

その車は私を追い抜いては止まり、私が通り過ぎたらまた追い抜いて前方で止まる、ということをずっと繰り返していました。

こちらの方はもちろん生身の人間だったのですが、急に曲がったりしてもついてくるし、先ほどの体験の記憶も蘇るしで、怖かったなぁ・・・。