数年前の話なんだけど、あまりにも嘘くさいし、本人的には滅茶苦茶なトラウマだったから語ってなかった話。
長くなるかも知れないが、見てもらえると多少トラウマ解消になりそうなので頼む。

何年か前、多分四、五年前だけど、当時大学生だった俺と友達(他に登場人物もいないけど一応Aね)で、県内の女子高の文化祭に行ったんだ。
理由はまぁお察しの通り、若い子ナンパしたくてさ。
女子校なら簡単だろってんで、さえない二人でのこのこやってきたわけだ。

でも予想通りというか食いついてくる子は何人かいて、結構調子乗ってたというかテンション上がってた。

高校の文化祭ってさ、教室が店になっててそこに売り子の生徒がいるだろ?
俺達は廊下歩きながら、その売り子の子達に手振って歩いたんだ。
相手も高校生だし、笑顔で振りかえしながら、「やっほー」なんて言ってくれるから嬉しくて、ずーっとそれやってた。

その後、二、三人の連絡先ゲットしてほくほくしながら帰ることになったんだけど、正門みたら朝よりも教師とか警備員多い。
女子校だから男二人がのこのこ出て行ってなんか言われたら嫌だなってんで、裏門から出る事にしたんだ。
今思えばそんなことで呼び止められたりはしないだろうし、あんなことになるなら堂々と正門から帰れば良かったんだ。

裏門のほうは全く人がいなくて、ていうかそもそも開いてなかった。
けど昇れば簡単に出れたし、人目につかず出られてラッキーくらいに思ってた。

裏門から出たとこは住宅街で、結構込み入ってたけど、方向さえ間違えなきゃ駅つくだろってんでAと連れ立って歩いていた。

最初は今日の感想とか下世話などうでもいい世間話で盛り上がってた。
けどだんだん妙だなって思い始めた。

人がいない。

こんなに家の建っている場所で、誰にも会わない。
しかもその日は日曜日。車一台も通らないのはあまりに不自然じゃないか?
Aも自然その事に気が付いたようで、でもそのときはそんなこともあるか位で互いに流した。

それからさらに数分歩いたとき、なんていうか、急に不安になったんだよ。
それと後ろから何かの視線?気配?空気?
よく怖い話である「後ろからつよい視線を感じた」って表現そのまま。
体験するまで「ゴルゴかよw」って思ってたけど、そんときから理解した。

そんとき、Aと目をあわせた。
Aも感じてるっぽかった。

A:「・・・なんか、後ろからきてる?よな?」

俺:「うん・・・不審者か?」

A:「なんかわかんねーけど、めっちゃ怖い。早く行こうぜ」

そんな感じのやりとりをして、心持ち早足で歩き始めた。

歩きながら2つ気付いてしまったことがある。
一つは、明らかに住宅街が広過ぎる。
駅から学校まではそう遠くなかったし、方向も合っているはずだ。
もちろんここに至るまで人がいないのもおかしい。

二つ目は、窓だった。
早足で歩きながらちらっと住宅街に目をやると、窓で何か動くものがあった。

一瞬、何だ人いるじゃねーかとホッとした。
けどよくみたら違った。

生っ白い手が、俺達に向かって手を振ってる。
しかも、窓という窓、開いている窓閉まっている窓全て、俺達二人が通り過ぎる直前にすっと手が現れ、一心不乱に振られている。

嘘だろ、と半ば信じられなかったが、止まっている車のすぐ横を通った時に中で振られる手を見た時に限界だった。

俺:「A!気付いてるか!?なんかヤバい!!」

Aの顔を見る。
もう泣きそうな顔してた。
Aの向こうに見える窓からも、白く揺れる手が見えている。

俺:「走れるか?」

無言で首を上下に振るA。
そのまま二人で走り出した。

手も怖かったが、何より後ろから来ている何かが一番怖い。
追いつかれたらどうなるんだ?ていうかアレなんなんだ?
振り返る勇気も余裕もなくてひたすらAと走り続けていた。

どれくらい走っていたのかわからないけれど、ここでAはガス欠になってしまった
運動系サークルだった俺に比べ、オタサーのインドア派だったAはそこまで体力がなかったらしい。

ひざをつくAに「もう無理そうか?」と声をかけるが、返事も出来ない

『これはホントに死ぬのかもしれない・・・。』と覚悟を決めかけたとき、Aが息絶え絶えに「行け」というのが聞こえた。
この状況でそんな映画みたいなこと言えるAは本当にすごかったと思う。

A:「走れるようになったらすぐに追いつくから、もう行け、大丈夫だから」

そんなの無理に決まってんのに、俺も助かりたい気持ちでいっぱいだったからか、しばらく押し問答した後俺は一人で走り出した。

このことは今でも後悔してるけど、どうすれば良かったのかはわからない。
あいつを背負ってでも一緒に逃げるべきだったのかな・・・。

Aを見捨ててしまった罪悪感から血が出るほど唇を噛み締めて走りつづけた。
でもさ、走りながら気付いちまったんだ。
Aを置いてきたあたりから、あの気配が徐々に消えてってる。
明らかにあの何かから遠ざかってたんだ。

泣きそうっつーか泣いてた。
恐ろしさとか情けなさとか悲しさとか、ぐちゃぐちゃだった。
結局倒れるギリギリまで走ったくらいのとこで、公園みたいなところにあたった。
人も何人もいて、助かったって物凄く安心したんだが、どうも様子がおかしい

その公園、川っていうか池?みたいなのがあったんだけど、そこに数人の人だかりができてる。
さらにバシャバシャと水の音。
ふらつきながらそこに行ったら、Aがいた。

先回りできるわけないのに、そんときは混乱してたのかAが助かった!やった!って嬉しくて思わず「A!」って声をかけた。

言った直後に状況が脳に入ってきた。
Aは無表情で誰かの足をつかんで水の中に沈めてた。
犬神家の有名なアレの、足掴んでるみたいな感じ。
逆さまにして突っ込んでた。
まだ足掴まれてる人は生きてて、もがく音でバシャバシャ言ってたんだ

俺:「何してんだ!!A!!!やめろよ!!!」

なんとか引きはがすと、沈められていた人はぐったりと横たわってしまった。
その人に向かってAは、手をひらひら降り続けていた。

そのあとはすぐに誰かが呼んでた警察が来て、知り合いの俺に事情を聞いてきた。
適当に誤摩化したけど、あの後Aは実家に帰っちまったしよくわからん。

沈められてた人も亡くなったのか、生きてるのか、怖くて聞けなかった。
ニュースにならなかったなら生きてんのかな?

でも結局アレがなんだったのかは分からない。