小学1年の時、家族で四国に旅行に行った。

旅館名とかはもう覚えていないが、かなり純和風な旅館だった。
正面にテレビがあって、その横に姿鏡があって、まぁ特に何も感じはしなかった。
ご飯を食べて、テレビの前にズラッとふとんが敷かれて、23時くらいには家族は就寝してしまった。
私はなかなか寝付けずしばらくテレビを見ていたが、2時とかになってきたのでいい加減寝よう。と思い、テレビを消してふとんに入った。

やっとウトウトしてきたとき、ふと人の気配を感じて目をあけた。
顔だけ動かして周りを見てみると、テレビの横の姿鏡の前に着物を着た女将さん風な女の人が正座して鏡の方を向いていた。
しかも手には少し大きめの丸いこれまた鏡を持って・・・。

その女将さん風は姿鏡の前で、座って大きめの手鏡を拭いていた。

そのときの私は『女将さんが夜、部屋を綺麗にしに来たのだ・・・』と思い、妙に安心して、そのまま眠りについた。

私はそのことをすっかり忘れてしまっていて、ついこの間母と旅館の話をしているときに急に思いだし、『夜中に女将さんが客の部屋に入るなんてありえない!』と驚愕した。

しかも、よーく思い出すと鏡の前に座っていたのに、私は鏡に映った顔を見てない。
なんにも映ってなかった。
それにも驚いた。

子供のときは気楽で良かったなぁとつくづく思った。

子供には大人に見えない物が見える。