とある神社、深夜になって1人の学生が入り込んだとか。

その神社はヤバイと有名で思慮の浅いアホやDQNが興味本位で這入り込んでは、手酷いしっぺ返しを受けたという。

こっくりさんみたく動物憑きにされたり、全身引っ掻き傷だらけになって逃げ帰りそのまま病院に担ぎ込まれたとか・・・。

学生としても神社に入り込むのは本意じゃない、寧ろ凄く嫌だった。
それを知っていた上でクラスの猿山リーダーは放り込んだのだ。

「断ったらお前の友達に嫌がらせをしてやる、それが嫌なら夜になって肝試ししてこい」と。
ご丁寧に入り口までそのリーダーの手下が見張りに来ていた。

其奴の嘲笑を背に受けながら学生は必死になって参道を上がり神社へと入った。

シーンと静まり返った神社はそれだけで恐ろしかった。
近くにそれなりの国道が走り、鳥居から見下ろせば街のネオンサインが幾つも見え人家の灯りも無数に浮かんでいる。
なのに、まるでそれから遮断されているかのように神社は静かだった、いや静か過ぎた。

学生はリーダーの指示通り本殿に上がり、扉を開いた処にあった本を回収した。

バタン、後ろから響いた音に安心しかけていた学生は肩をビクリと動かした。
慌てて扉を開こうとしたがつっかい棒をされているらしい。
向こう側から何とリーダーの笑い声と、それに追随するような手下の嘲笑が聞こえた。

「追加ルールだ、そのままそこで一晩過ごせよ」

明らかにヤリ過ぎな行為に学生は非難の声をあげたが、既に笑い声は遠離ってしまった。

どうやら奴らは本気で一晩学生を本殿に監禁するつもりらしい。
学生の頭から怒りが抜けると、代わりに恐怖と孤独で満たされた。

締め切られた雨戸の隙間から月明かりが静かに指し込む本殿はやはりシンと静かで、広さと比較して小さな祭壇がある以外は殆どものがない有様だった。

そう言えば何を奉っているかも解らないな等と考えていた学生の鼻にふっと獣臭い臭いが過ぎった。

野良犬かでかい鼠でもいるのかと考えたが、それにしては妙に甘い感じもする。
獣臭さと甘さが混ざったその臭いはどんどん強まり、やがて頭痛すら伴う感じになった。

これは堪らない・・・と外気が入って来そうな隙間を探そうとした学生は驚いた。
本殿の祭壇の前に、三人の巫女装束を着込んだ女性が正座していた。
しかも顔をすっぽり隠せる狐面を被っている。

学生は唖然とした。
確かに入った時は居なかったし、視認するまでは全く気配すら感じなかった。

学生の動揺を余所にそいつ等はすっと腰を上げ、そのまま四つん這いになり、学生の方へと迫ってきた。

無言のままそんな風に迫られたら誰だってびびる。
しかも外に逃げ出せない状態なら尚更・・・。

もう扉が壊れてもいいと言わんばかりに学生は扉を叩いてつっかい棒を外そうとした。
だが遅すぎてそいつ等に学生は取り押さえられた。

フゥフゥという興奮した荒い息、そして更に強まる獣臭。

学生は完全にパニックになっていた、相手の意図も正体も解らない。
だけど確実にヤバイ感じだ、取り押さえている手も異様に冷たいし、密着しているから臭いが凄い。

「離せ、離してください!」と叫んでいると、のし掛かるような姿勢で狐面が近付いてきた。
タラリ、タラリと学生の顔から首筋、着ていたシャツの肌が出ている部分に粘液がかかる。

狐面は目のの部分も横線状に穴が開いていた。
そこから巫女達が液を垂らしていたのだ。

しかも、それを両手で塗りつけるようにして肌に広げてくる。
どんだけ止めてくれ!と懇願しても巫女達は止めようとしなかった。

混乱と強烈な獣臭と液の臭い、更に荒らげた呼吸に追い詰められ学生は意識を失った。

翌日、お参りをした人が本堂につっかい棒をしているのを発見し監禁されていた学生を発見。
起こされた学生は恐怖の一夜を思い出したが、残っているのはボロボロに引き裂かれた本だけ。
彼自身には液や臭いどころか何の異常もなく、本殿内の空気は清浄で獣臭さなど全く残っていなかったという。

警察も出て来て悪ふざけが過ぎている!と、リーダーと手下の両親に連絡が入った。
しかし、両親達はそれどころではなかったという。

リーダーとその晩神社に居た手下達は、全員正気を失い獣のように唸り四つん這いで暴れていたからだ。

彼らは暫くの後、正気を取り戻したが、かつての横暴さは鳴りを潜め、その内全員が離ればなれに転校したという。

学生と言えばあの一夜を除けば何も起こらず平穏な日々を過ごしていたらしい。

ただ、時たま異常に獣臭い場合があり、それを指摘すると慌ててあの神社に参拝したそうだ。

その代わり、それ以降彼に悪意を持って近付こうとした相手は大概直ぐに遠離り悪縁は長続きしなかったそうな。