※長文です。

小学生の頃、夏休みを利用して住んでいる東京から北海道にある母方の祖母の家に一人で遊びに行ったことがあった。

祖母の家はメロンで有名な村の近くで、国道以外は未舗装の農道しかないようなど田舎だった。
だがその田舎さこそが、都会っ子の僕には何よりも魅力的だった。

そんな祖母の家には大学の関係で北海道を離れ、そのまま嫁いで他県に腰を落ち着かせてしまった母の代わりに、家と畑を継いだ叔父と、九十過ぎの大伯母の三人が住んでいた。

祖父は僕が生まれてすぐに早逝したと母から聞かされている。
女癖と酒癖が悪かった祖父は、家族はおろか親類縁者からも疎まれていた。

生前の行いの悪さのせいか、仏間には祖父の遺影すらなく、僕は祖父がどんな顔をしていたのかさえ知らず、家族の間でも祖父の話は半ば禁忌のように話すのを禁じられていた。

祖父の生前の素行の悪さは親類が集まった時の酒宴で、酔っ払った親類達が憎らしげに語る話をそれとなく聞くうちに、図らずも大まかなことを知ってしまった。

だからと言って、顔も知りもしない故人の祖父を僕がどうこう思うことはなかったが、大伯母は祖父の親類筋だと両親から聞いたことがあり、遺影を置くのが嫌な程嫌っている人の親類である大伯母が祖母の家に住んでいるのは、子ども心に不思議に思えた。

それはともかくとして、祖母も叔父も訪れる度いつも本当によく僕を可愛がってくれて、田舎でしか体験できない遊びを行くたびに沢山僕に教えてくれた。

そんな二人とは対照的に、大伯母はぼっとん便所につながる長い廊下の右側にある西向きの自室に篭っており、食事も自室でとるため、ほとんど顔を合わせることはなかった。
僕は遊びを教えてくれる祖母と叔父の事が大好きだったが、一緒に住んでる二人には悪いが、大伯母の事は大の苦手だった。

大伯母は灰色の髪をとかしもせずボサボサのままで、いつも大きな布マスクを付けて顔を隠していた。
それだけでもかなり異様な姿なのに、大伯母はよく、歌うような調子で、とでもじゃないが日本語には聞こえないような謎の言葉をブツブツと呟いていた。

ただでさえ不気味なぼっとん便所に行く時に、襖越しにその声が聞こえると、本当に気味が悪くて、出るものもなかなか出なくなってしまう程、僕は大伯母を嫌っていた。
それでも大伯母とは普段顔を合わせるわけでもなく、僕はその年、計十日間の予定の田舎暮らしを順調に満喫していた。

そんな訳で、僕の肌が田舎の子と変わらないぐらい日焼けで黒くなった七日目の夜、僕は二階にある叔父の部屋で叔父と一緒に寝ていた。

それまでは毎日遊び疲れて朝まで泥のように寝入っていたが、その日、僕は真夜中に聞き慣れない物音で目を覚ました。

最初に聞こえてきたのは玄関の引き戸が勢い良く閉められた音と、誰かが外を駆けて行く慌ただしい足音だった。
続いて聞こえてきたのは、遠くてから聞こえてくる短い間隔で鳴らされている鐘の音だった。

僕はその鐘の音が聞こえてくるのは、村で火事が起きた時だと叔父から聞かされていた。
僕は一向に止まない鐘の音に不安になり、横で寝ているはずの叔父を起こそうと叔父の方に体を向けたが、すでに叔父の布団に叔父の姿はなかった。

そこで始めて僕は先程の玄関の音と足音が叔父のものだということに気づいた。

消防署が隣接した町との共同消防署だけしかなく、消防車も小型の放水車が数台しかないこの地域では、町民が消防団を結成していることが多く、当然叔父もその消防団に所属していた。
見れば、開きっぱなしの押し入れから、叔父が格好いいだろうと自慢していた銀色の防火服と赤いヘルメットが無くなっていることで、叔父が消防団として消火に向かったことが改めて分かった。

そうして部屋に一人きりだと思うと、今まで意識すらしていなかった、古い家屋特有の不気味さが急に目に付くようになった。
染みの浮いた板張りの天井も、曇った窓ガラスも、目に付く見慣れないもの全てが部屋の暗さを強調しているようで、途端に恐ろしくてたまらなくなった。

僕は祖母の元へ行こうと思い、叔父の部屋の襖を開いた。
夏でも夜は冷える北海道らしい冷たい空気が廊下から体に当たり、僕は思わず身震いをした。
叔父の部屋は階段のすぐ近くにあったが、見れば階下はまるで黒い水に浸っているように暗かった。
それでも一人で居るよりはましだと、僕はすぐに階段を降りはじめたが、旧家の祖母の家の階段は急で手すりもなかったため、僕は手を着いて腹を階段に向けた格好で慎重に一歩一歩降りなければならなかった。

一歩進むごとに闇に向かって沈んで行くような暗くて急な階段は・・・僕の心の臆病な部分を強く刺激し、僕は思わず祖母を呼んだ。

祖母:「はあい」

その返事は不思議なことに二階から聞こえてきた。
不思議に思って視線を階下から二階に向けると、叔父の部屋の向かいの部屋の襖が僅かに開き、暗くてよく見えなかったが、そこから白い顔が覗いているのが分かった。
叔父の部屋の向かいの部屋は元々は母の部屋だったらしいが、今は物置になっていたはずで、何故そんなところに祖母がいるのかが不思議だった。
僕は思わずもう一度襖から覗くその顔に呼びかけた。

祖母?:「はあい」

そう応えると、”それ”は廊下に出てきた。
空中に浮かぶそれは、祖母ではなく、能で使うような真っ白いお面だった。
お面のあちこちに細かい亀裂が走り、それがまるで皺のように見えた。
そして微笑を模したそのなりからは、むしろ悪意がありありと伝わってきた。

僕は恐怖で体が強張り、思わず仰け反ったせいで階段を踏み外し、そのまま階下に落ちてしまった。
落ちた際に鼻と肘を階段にぶつけ、止まる際に頭を強く床に打ち付けた。

痛みと衝撃にチカチカする視線がようやく落ち着くと、お面が二階の廊下からはこちらを覗き込んでいるのが見えた。
あまりの恐怖に、僕は這ってその場から逃げた。
逃げながら今度は叫ぶように祖母を呼んだが、聞こえてきたのは、「はあい」と、やはりお面の返事だった。

やがて僕は這って逃げながら廊下の行き止まりまで来てしまっていた。
振り返ると、廊下の先にあのお面がいるのが見えた。
よく見れば、お面はいつの間にか黒い靄のような体で床に立っていた。
そして、震えている僕に向かって、それはゆっくりと近づいてきた。

歩く度に泥が落ちるような音をたてながら、それは徐々に近づいてくる。
頭の中が恐怖で真っ白になったとき、「イテッケ!」と大きな声が廊下に響いたと思うと、廊下の横の襖が開き、大伯母が僕とお面の間に両膝を立てた格好で座り込んだ。

「クエッ、イワンケ。イヨマッメノコ」と優しい口調で僕に言うと、大伯母は改めてお面に向き合った。

僕には言葉の意味がまったく分からなかったが、ただ、とても暖かい大伯母のまなざしは、少しだけ僕の心を落ち着かせてくれた。

大伯母は煙の出ている陶器の皿のようなものを取り出して自分とお面の間に置いた。
そして小刀を懐から取り出すと胸の前にかざし、例の歌うような調子であの謎の言葉を口ずさみ始めた。

はじめは大伯母もお面も微動だにしなかったが、やがてお面が一歩前に進んだ。
途端、大伯母の首筋に汗が浮かび始め、明らかに呼吸が荒くなった。
後ろからで見えはしなかったが、大伯母の顔はきっと苦痛や焦りでゆがんでいたのだと思う。

僕は思わず大伯母の背に縋り付き、大伯母の背を必死にさすった。
さすったところで事態が好転するとは思わなかったが、僕に出来たのはそれだけだった。

大伯母:「イヤイライケレ。ラムピリカポンヘカチ」

大伯母はそう言って僕に微笑むと、再度お面に向き合った。

大伯母:「ホシキエカシカムイ、エライライ、エルサ!ウェンカムイ、ウェンキクキク!」

大伯母は怒声を上げ、小刀を鞘から抜き放つと、小刀を床に突き刺した。

すると陶器の皿のようなものから立ち上っている煙が徐々に形をなし始めた。
煙は朧気ながらも、大柄の男性の様な姿を形作った。
大伯母はその煙に一礼すると、お面を指さした。

煙はまるで意志があるかのように、ゆっくりとお面に近づいていった。
そしてお面の後ろの黒い霧のようなものと重なると、絡み合うように玄関の引き戸の隙間から外に消えていった。

後には、泥のような塊と、その上に乗った真二つに割れたお面が残されていた。

大伯母:「オンカムイ、オンカムイ。アフンチャロ、カリ、カムイモシリ、パイェ、ヤン」

そう言うと、大伯母は頭を下げて大きく息を吐いた。

僕は大きく息を吐いた後、背中を上下させて息をしている大伯母の背をさすり続けていた。
どうやら、大伯母は声を出さずに泣いているようだった。

叔父:「いやあ、小火ですんでよかったよ」

そう言って叔父が玄関の引き戸を開けた瞬間、僕は堪えていたモノがあふれ出し、大伯母の背をさすりながら大声で泣き出してしまった。
その後、手伝いに行っていたという祖母も少し遅れて帰宅し、そのまましばらくは片付けの音や泣きわめく僕の声で、家の中はばたばたと騒がしかった。

片付けが終わる頃にようやく僕が泣き止むと、祖母が大伯母の言葉を通訳してなにがあったのかを詳しく説明してくれた。

祖母:「原因はあの火事なんだ。付け火だったのか、何なのか、何にせよ悪い気持ちを持った誰かが火を点けたもんだから、それにつられた悪い神様がこの町に立ち寄って、たまたま我が家に来ちゃったみたいなんだわ。でも、わたしらも悪かったんだ。火事に慌てて、寝たままだから良いかって飛び出したせいで、アンタを一人にしちゃったわけだから。」

祖母:「そんで不安になったアンタが誰かに呼びかけて、それに悪い神様が代わりに答える事で力をつけちゃったみたいなんだ。本当に怖い思いをさせてしまって悪かったね」

そう言って頭を下げる祖母は、本当に申し訳がなさそうな顔をしていた。

祖母:「大伯母ちゃんは過ぐに悪い気配に気付いたみたいなんだけどね、年で直ぐに体が起こせなくって駆けつけられなかったらしいわ。そんでも何とか間に合って間に割り込んだは良いけど、どうにも頑固な神様だったみたいでね、どれだけお願いしても聞いてもらえんかったらしいわ。」

祖母:「『こりゃだめかもしれん』、って思った時、あんたの手から背中を通して、暖かい力が入ってきて、その力を使ってご先祖様達の魂に呼びかけたんだとさ。そしたら呼びかけに答えてくれたご先祖様が、あの悪い神様を神様達の国へ連れてってくれたらしいわ。」

祖母:「あらやだ、お婆ちゃんにはよく分からんけど、アンタも頑張ったんだね」

大伯母:「トアアン、ヘカチ、アナクネ、ラムピリカ、ヘカチ」

祖母:「あらまあ。大伯母ちゃん、アンタのこと、この子は真っ直ぐな気持ちの子、だってさ」

僕は褒められたことに照れながら、大伯母が何で日本語を話せないのかを率直に尋ねてみた。

祖母は少し困った顔をした後、大伯母になにやら呟き、それから居住まいを正し大きく咳払いをしてから答えを返した。

祖母:「アンタには少し早い気もするけど、良い機会だから一から全部教えとこうね」

祖母の答えに僕も居住まいを正して話を聞いた。

祖母:「大伯母ちゃんの甥、アンタのお爺ちゃんはね、アイヌって人たちだったんだわ。もちろん、大伯母ちゃんもアイヌだね。アイヌってのは、ずっと昔々からこの北海道に住んでた人なんだけど、色々あって、土地を奪われて日本人として暮らすことになった人たちなんだわ。」

祖母:「お爺ちゃんはアイヌだったけどちゃんと学校にも行って、ちゃんと仕事して、それで私と一緒になったんだ。でもね、爺ちゃん頑張りすぎてね、疲れすぎたところで悪い神様に心をもってかれちゃったんだ。」

祖母:「それで悪いことを沢山したし、早く亡くなっちゃたの。でも悪いことをした魂は、ご先祖様と同じ所に行けないから、誰かが爺ちゃんの代わりにご先祖様に謝り続けなければならないんだ。それでアイヌの巫女だった大伯母ちゃんが『自分でやる』って言ってくれて、ご先祖様と誓いをしたんだ。」

祖母:「それが、シャモのなかにいながらアイヌらしく生きるって誓いさ。具体的にいうと、アイヌ語しか口にはせず、毎日の殆どを祈って暮らし続けるって誓いなんだわ。ああ、シャモ、ってのは日本人、つまり私らのことだね」

ここまで分かったか?と問う祖母に曖昧に答えながら、僕は先を促した。

正直分からないことも多かったが、大伯母が亡くなった祖父のためになにかとても大切な事を守り続けていることは、幼いながらも十分に分かった。

祖母:「それで爺ちゃんを正しいアイヌ人としてご先祖様達に認めて貰うために、家でも爺ちゃんの遺影は飾らないし、一周忌とか三回忌とかは一切やってないんだわ。あれは日本人の習慣だからね。寂しいけど、爺ちゃんのためだから、仕方がないんだ」

そう言った祖母の目には、小さく涙が光っていた。

大伯母:「トオアン、ポンチョ、アナクン、コヤイヌパ」

祖母の背中越しに大伯母が言った言葉に祖母は驚き、

祖母:「本当かい?」

そう何度も何度も大伯母に確認し、その度に何度も深く頷く大伯母を見て、祖母は今度は大粒の涙を流し始めた。
呆気にとられたのは僕だけじゃなく叔父も同じようで、叔父は祖母の背を撫でながら何を言われたのか祖母に話すように促した。

叔父:「実は、オレはアイヌ語が分からん。家でアイヌ語が分かるのはアイヌ人の大伯母ちゃんと、アイヌ人の死んだ爺さんと長く一緒にいた婆さんだけなんだわ。オレ、親父っ子でねかったしね」

そう困ったように頭を掻く叔父を押しのけると、祖母は僕の手を握って強く握りしめた。

祖母:「ありがとね。アンタが優しい気持ちで大伯母ちゃんの背中をさすってくれたおかげで、ご先祖様がお爺ちゃんのことを許してくれたんだって。正しい心を持った子孫を残した男の罪は問うに値しないって事らしいわ。本当にありがとうね。アンタを助けてくれたご先祖様の霊の中に、爺ちゃんがいるのを大伯母ちゃんは確かに感じたらしいわ。本当に、なんて言ったらいいか、やっとあの人、帰れたんだわ」

そう言って今度は声を上げて泣き始めてしまった祖母に戸惑う僕と叔父を見て、大伯母は無言で部屋を辞するよう僕と叔父に促した。
黙って僕と叔父はそれに従い、僕は想像を超えた一夜の疲れから、叔父は駆けつけた火事騒動の疲れから直ぐに泥のような眠りついた。

翌朝、少し声がかれている以外は何事もなかったように、祖母が朝食の準備をしていた。
その日は、初めて大伯母も食卓についていた。

大叔母:「驚かせちゃうと思ったからね、今まで外さなかったけど、ゴメンしてな」

そう言ってマスクを外した大伯母の口には、ピエロのように唇を大げさに強調した模様が入っていた。
色は青みがかった黒で、見た感じでは入れ墨のように見えた。
その入れ墨、はもみあげ近くまで伸びているとても大きな入れ墨だった。

大叔母:「口裂け女みたいでしょ?これはチャロヌイっていってね、アイヌの女の化粧なんだわ。見慣れないうちは怖いかも知れないけど、ゴメンしてな」

初めて聞く日本語を喋る大伯母の声は、日本人となにも変わらなかった。

その日から残りの二日間、僕は大伯母にべったりで、アイヌのことを何でも良いから教えてくれと、色々と質問していた。
大伯母もそんな質問攻めにいやな顔一つせず、いろんな事を日本語で教えてくれた。

大叔母:「おしゃべりは楽しいね。神様にずっと謝ってばかりだったから、坊と話すのが楽しいよ」

そう言った大伯母の顔は、口の入れ墨と相まって、顔全体で笑っているようだった。

そして東京に帰る日、僕は帰りたくない気持ちで押し潰されそうで、大伯母の胸に顔を埋めてわんわん声を上げて泣いた。

大伯母は僕が泣き止むまで、僕の髪を優しく撫で続けてくれていたが、体調が優れないのか、しきりに咳をしていた。

大伯母とは、二度と会えないかも知れない。
漠然と、でも確信に近い予感で、僕は大伯母からどうしても離れたくなかった。

叔母:「大丈夫、坊は真っ直ぐな気持ちがあるから、どこにいたってご先祖様が見守って下さるよ。婆のこの世での役目はもう終わった。婆は坊のおかげで、ちゃんと役目を果たせたんだ。だから婆はご先祖様と一緒になって、いつも坊を見守ってあげられるようになるさ。寂しがる事なんてない。なに、ちょっと服を脱いで、魂になるだけさ」

そう言った叔母の顔は、やはり笑っていた。

そして遂にいよいよ時間がなくなり、僕は大伯母に抱きついたまま、叔父の車で空港へ連れて行かれた。

何度も足を止めて振り返る僕を見送りながら、空港のゲート越しに大伯母がこう言った。

大叔母:「オマッ、サンテク。ヤエライケレ。ランマノ、ラムピリカ、イラムマッカ、エプンキネ、ヤン」

手を振る大伯母に、僕もならいたてのアイヌ語で答えながら、千切れんばかりに手を振った。

僕:「オマッ、ウタリ!」

僕は何度も「オマッ!」と言いながら、搭乗時間ぎりぎりまで大伯母に手を振った。

そしてその年の冬、大伯母はやはり亡くなった。
一応診断は肺炎だったが、祖母曰わく、最後の時には咳き込むこともなく、穏やかに亡くなったとの事だった。

葬儀はあくまで簡素に行われた。
それは祖母なりの、アイヌとして生きた大伯母への敬意の表れだと僕は感じた。
そしてその大伯母の葬儀の席で、僕は祖母から大伯母があの日以来アイヌ語は一切使わなくなったことを聞かされた。

大伯母のアイヌとしての人生は、あの日悔いなく終わったのだろうと、祖母は僕に言った。
葬儀の後、白木の木枠が真新しい感じのする大伯母の遺影は、祖母と僕の強い意向で、同じく木枠が真新しい祖父の遺影の横に飾られた。

初めて見た祖父は大伯母によく似た細面の優男で、そんな祖父の遺影の横で笑う遺影の大伯母の口には、黒々としたチャロヌイがはっきりと映っていた。