AとBはとても仲のいいクラスメイトで二人はいつも一緒だった。
互いの家が近くにあるので、一緒に登下校していた。
学校の休み時間も二人で遊んだし放課後にも二人で遊んだ。

学校の近くに沼があり、その沼は子供にとっては格好の遊び場であった。
二人は今日は沼で遊ぶことにした。

しばらく遊んでいたうち急に「うああ!!」と、Bがバランスを崩して沼に落ちてしまったのだ。

自分一人、しかも子供の力だけでは無理だ・・・。

そう思ったAは「誰か呼んでくる!!」と言って走って助けを呼びに行ったが、「助けて、助けて」「Aくんたすけて!!たすけ・・・」「助けて、助けて」という声を背に全速力で走るA。

Aがやっとの思いで助けを呼んできた時、Bは浮かんでいた。
間に合わなかったのだ・・・。

もしかしたら自分が彼を殺したんではないか?
自分があの時即座に手を伸ばしたら助けられたのかもしれない・・・。

その件以来、Aは沼に近づくことはなくなった。
近づけなかった・・・。

沼を避けることで罪の意識から逃れられ、あの事件のことを忘れられるのではないかと思ったからだ。

そして、20年後。

Aは地元で就職し、結婚して子供がいた。
その日は一人息子Cの誕生日だった。

Aは息子のために、ケーキとプレゼントを買い家路を急いた。

すると看板が・・『通行禁止』

朝会社に行くはしていなかった工事をしていなかったのに・・・この道を使えないということは・・あの道を通るしかないな・・・。

Aのあの記憶が決して消えたわけではない。
避けつづけた20年間。

しかし通らなくては帰れない、しかも今日は息子の誕生日だ。
早く帰らなくては・・・。

意を決して沼の横を通った、その時「助けて、助けて」と何度も助けを呼ぶ声が・・・。

Aは沼の方を見ないようにし、全速力で走った。
息を切らしながら家に帰ると妻が彼を出迎えてくれた。

しかし、肝心のCの姿が見えない。

妻に「Cは?」

「沼に遊びに行ったわよ、あの道通ってきたんでしょ?Cいなかった?」

その日は20年前のBの命日だった。