知り合いの話。

彼の田舎には、一寸変わった道があるという。
山へと続いているその道は、かつては目抜き通りだったが、今では町の中心から外れてしまい、通る者も少なくなっている。

この道を一人歩いていて、葬儀の列と行き会うことがあれば、決して仏の名前を確認してはいけないのだと言われている。
仏の名前が、自分のものだということがあるからだ。

喪主が抱えた遺影の写真が、自分の顔だということがあるからだ。
慌てて振り向いても、道の上には自分しか居らず、列は幻のように消えている。
・・・そんな不気味なことが時々あるらしい。

自分の葬儀を目撃した者は、遠からず鬼籍に入るのだとも言われている。
だから彼や友人たちは、この近くで葬儀を見かけると、顔を伏せ、親指を隠して足早に通り過ぎていたそうだ。

彼「親指を隠すのは理由がわからないけど、皆がそうしてた。ま、実際のところ“学校の七不思議”みたいな類いの話かもしれないけどな」

二人で葬儀の列とすれ違った時に、彼はそういう話をしてくれた。