夏休みにおばあちゃんの家に行った。

おばあちゃんはいつも面白い話ばかりをしてくれる。
今日聞いた話はおじいちゃんが昔キツネに騙された話だった。
昔の話なのでおじいちゃんのことを“僕”と書く。

ある日の夕方、近所の駄菓子屋に行くと知らない男の子がいた。
僕がお菓子を買ってると、駄菓子屋のおばちゃんがケーキをくれた。
僕のことを小さいころから知っていたらしい。

ケーキを持っておばあちゃんの家に帰ろうとすると、さっきの男の子が突然「僕にも頂戴!」と言ってきた。

僕は「ダメ!」と強く言いその場から逃げようとしたけど、その子に引っ張られて転んでしまった。
ケーキの箱が地面に落ち、中身が全部土の上に出てしまった。

僕が「ケーキ返せ!」と泣くと、その子も突然泣き始めて、そのまま走って逃げてしまった。

おばあちゃんの家に泣きながら帰るとおばあちゃんはやさしく慰めてくれて、「それはきっとキツネの子供だ」と、そんな言葉を聞きながらおばあちゃんに撫でてもらった。
すると、なんとさっきの男の子が僕のお母さんと一緒におばあちゃんの家にやって来た。

その子は僕の従兄弟だったらしい。
お母さんはその子が泣いてるのを見つけて訳を聞き、ケーキを買って帰ってきたのだそうだ。

僕とその子は仲直りして一緒にケーキを食べたが、食べ終わるとお母さんがどこでケーキを貰ったのか聞いてきた。

僕が駄菓子屋のおばちゃんだと言うとおかあさんとおばあちゃんは不思議そうな顔をして「あそこは奥さんが亡くなって、もう何年も経ってるはずだけどねぇ」と言った。

僕はハッ!として、急いでケーキを落としたところまで走っていった。

そこにはひっくり返ったケーキの箱と、箱の中からこぼれた沢山の枯葉しかなかった。