紳士服地を扱ってる会社にいるんだけど、先月棚卸の時に大阪の箕面にある倉庫へ行った。

1日かかって、倉庫出たのが夜24時過ぎ。
タクシー呼んで倉庫の前の道路でボーっと待ってた。

すると左側から「ガラガラガラ・・・」って音がした。
見るとお婆さんが乳母車を押して俺の前を通りすぎていく。

お婆さんは裸足だった。

俺は『気の毒に・・・』とは思ったけど、別に怖いとは思わなかった。

お婆さんの姿が見えなくなった頃タクシーが到着。
一本道だったので発車してしばらくすると、さっきのお婆さんの後姿が見えて来た。

横を取りすぎた時運転手に、「こんな夜中に危ないですねえ~」と話しかけた。
運転手は「ハァ?」と言った。

俺は「いや今のお婆さん・・・」と言いかけて思い出した。

思わず振り返って見ると、道路の真ん中でお婆さんが正座してこっちに手を振っていた。

寒さ以外で体が震えたのはそれが初めてだった。