今から15-16年前の話です。

当時、私は大学新卒ながらも派遣社員として、某中堅ゼネコンで働いていました。

私の所属は事業開発室。
県庁や市役所、地元信金の天下り部署で、私以外は50-60代ばかり。
私はおじさんたちのために、お茶汲み、コピーやFAX、ワープロ代書などお世話係みたいな感じで、正社員にはさせられないというか、誰にでもできる雑用係と、職場の華wみたいな扱い。
仕事は楽だし、残業もないので、資格所得のための勉強をしながら働いていました。

その部署には、私の机以外に6人の机があり、5つは室長と部長、そして1つが謎でした。

謎というのは、その残りの席の人は、私が4月に入社してから、3ヶ月現れなかったからです。

7月のお昼過ぎ、やっとその人・・・A部長心得さんが来た時、その出で立ちに私は驚きました。

ポロシャツにチノパン。
そんなラフなスタイルの人は、社内で初めて見ました。
そしてなによりも若すぎる。
平均57歳の部署に20代後半ぐらい。
見た目は色白中肉中背のお坊ちゃん。

「お久しぶりでーす」と入室してきて、カバンを机の上に置くと「社長室行ってきまーす」と。

あまりに不思議な人だったので、日を改めて室長に聞くと・・・「あの人は、特別な人。年に10日も出社しない。その代わり、年に100億円の契約を取ってくる」

年に100億といったら、年商1000億円程度の中堅ゼネコンにすると、全体の一割です。
事業開発室の関与する売上が年間200億円ですから、その半分はA部長心得のもの・・・。

「元々は、普通に入社して○○支店配属だったんだけど、遅刻や無断欠勤など勤務態度に問題があり、何度もクビになりそうになったのだが、そうなる前に、10億とか20億の商談をまとめてくる。結果、どこに配属されても上司と上手くいかず、社長預かりでこの部署に配属された」

「変わり者の天才営業マン」ということで、売上さえ上げれば、なんでも好き勝手にやっていい、と。

A部長心得は、取ってきた契約を社長室に報告し、社長がどこの営業部に振り分けるか決定するから、契約書を作成しなくてもいいし、彼の持ってくる領収書はノーチェックで受ければいいから、と・・・。

年が明けて1月・・・。
室長や他の部長は直帰、私が伝票整理のため、滅多にない残業をしていたら、A部長心得が「あれれ?残業なんて、この部署で珍しい」とフラリやってきました。

私も滅多に見られない珍獣登場みたいに驚いていると、A部長心得が私の顔をじっくりと見て、机から一筆箋と筆ペンを取り出して、サラサラサラ・・・と書いて、私にくれました。

そこに書いてあったのは・・・。
・今年の春の試験は落ちる、が、諦めないで勉強は続けること。
・夏に男と知り合うが、焦らずにじっくりと見定めること。付き合わないのが良い。
・来年の春の試験は受かる。安心して受けなさい。
・来年の秋に転職の誘いが来る。その誘いにはすぐに乗ること。年収倍増する。
・来年の冬に、転職先で伴侶と知り合う。結婚を申し込まれたら、迷わず受けよ。

その後、一筆箋に書かれたことは、全て的中・・・。
まず、春の試験に落ち・・・(これは偶然だと思った。私が資格勉強してるのは室長も知ってたから)
夏に、女友達と遊びに行った先で知り合った男に交際を申し込まれたが、交際を申し込まれた2週間後に、その男はDVで彼女に重傷を負わせて逮捕され・・・。(ここからA部長心得を信じるようになった。DVするようには見えない優男だったから)

次の年の春、張っていたヤマが嘘のようにドンピシャで、ほぼ満点で資格試験に受かり、夏にその資格所有者対象のセミナーに出たら、大学時代の先輩にばったり遭遇し、9月に、その先輩が起業するので、いっしょにやらないかと誘われて・・・
12月、先輩の友人と一緒に食事に行ったら、ひじょうに気に入られてプロポーズされ・・・。

会社宛にA部長心得へ結婚式の招待状を送ったところ、「退職しました」という返事が総務部から来ました。

結婚から10年以上が経って、A部長心得はいったい何者かな?と思うことがあります。
占いの達人だったのか?霊能者だったのか?・・・なにが見えていたんでしょう?

先日、CSでネパールの亡命チベッド人ドキュメンタリーを観ていたら、A部長心得そっくりのお坊さんが出ていて、急に思い出して書きました。