父が子供の頃の話なんだが、私の父は子供の頃から霊感が強く、よく普通の人には見えないものを見たり感じたりするらしい。
それで、父の父、つまり私のおじいちゃんは、銀行に勤めて支店長をやっていた。

当時の銀行員はいまよりも待遇がよく、社宅も二階建ての豪華なものだったらしい。

父には妹がいる。
つまり私の叔母に当たる人物なのだが、この叔母は二階にある自身の部屋にいると、階段を登ってくる音が聞こえることがあるらしい。

父や家族に、「今上に上がってきたか?」と聞いてみても、「ずっと部屋にいた」とか「一階の居間でテレビを見ていた」とかいう回答しか得られなかったらしい。
そしてさらにこの階段を登る音が、日に日にじょじょに近づいてきているらしいのだ。

おかしいと思い恐怖にかられながらも叔母は普通に生活していたらしい。
そしてある夜目が覚めると、毛深い男性の腕らしきものに首をしめられたらしい。
意識を失うと朝になっていたようだが、確実に夢ではないという。

父や家族はまずいと感じながらも、どうすることもできず、様子をみることにしていたようだが、ある日父も階段を登る音を聞くようになったらしい。
そして、しばらくその現象は続き、近づいてくる足音が階段をのぼり終えたと思ったとき、「お前もか!」という声が確かに聞こえ、辺りを見渡しても誰もいない。

怖いというより真相を確かめたかった父は、押し入れをガラりと開けた。
しかしそこには誰もいなかったらしい。
祖父の転勤でその社宅は離れることになったらしいが、その際、祖父は銀行の同僚にこう言われたらしい。

銀行の同僚「あの部屋、なにもなかったですか?」

不思議に思い、祖父がなぜかと尋ねると、その社宅で昔自殺があったらしい。

そして自殺していた部屋はなぜか物置として使用していた部屋で、父と叔母の部屋の真下の部屋だった。