これは常磐線での話。
出てくる駅の位置関係は上野→(約1時間)→牛久→(約15分)→土浦→(約1時間)→水戸

今はそれほどでもなくなったが、昔の常磐線は車内で酒盛りする人が多かった。
特に夕方の帰宅ラッシュでは立っている人まで酒を持ち込んでいた。

その人も缶ビール片手に柿ピーなどつまんでいたそうだが、土浦を過ぎて車内が静かになると、うつらうつらと眠ってしまった。

ハっと目を覚まして、「ああ水戸は寝過ごしたか・・・」と車窓を見ると妙に明るい。
上野を出た頃にはもう日が沈みかけていたはずだったが・・・と、腕時計を見ると3時過ぎ。
しかも窓際のビールはワンカップと団子に変わっている。

訳も分からぬまま駅に着いたので、とにかく急いで降りてみれば牛久である・・・。
まさか丸一日を寝過ごしたなんてことは・・・・・・と降りた列車を振り返ると、車内の客はみな白装束で、青白い顔をしながら自分を睨んでいる。

ひいッ!と声を上げるや否や、列車の終端からは車掌が降りて走ってくるではないか。

これに捕まってはならぬ!と、夢中で階段を駆け上がった先には果たして見慣れた水戸の駅、外は暗くて、時計も7時。
どうやら助かったらしい・・・。
なんだ夢か・・・無事でよかった・・・と改札を出るとなじみの顔。

これ幸いと駅前の居酒屋で飲み直しついでに事の次第を話した。

なじみの顔:「つまり、変な夢見て、自分でも知らねぇ内に水戸で汽車を降りてたと?」
俺:「んだ。人間の体っちゃ普段の動作はよくよく覚えてるもんだな」

なじみの顔:「いや、それはおかしい。常磐線はもう6時っからずっと事故で止まってんだから上りも下りも汽車は来ねぇし、それで俺も帰れねくなって突っ立ってたのが、オメェはどこの汽車さ乗ってきたっつーんだい?」

俺:「おい、ごじゃっぺ(嘘)言うでねぇ」

なじみの顔:「ごじゃっぺなもんか。階段から上がって来たのもオメェ一人だっぺ」

俺:「すっと・・・・・・俺はどっから・・・・・・・・・・・・おい、今日何月何日だ!?」

しかし、友人の答えた日付は確かにその日のものだった。

結局、来るはずのない列車で、どうやって水戸までたどり着いたのかは分からなかったが、それからその人は酒を断ち、居眠りもしなくなったという。