夢の話なんだけども、大学生のときに変な夢を見た。
鉄格子の薄暗い牢獄のような所に閉じ込められていた。

十畳ほどの部屋に、男女併せて二十人くらいの日本人がひしめきあってた。
みんな同じ無地の白Tシャツに黒い短パン姿で、さながら本当の囚人のような気持ちがした。

夢だという自覚は持っていたが、ちょっと試しに隣の男に話しかけてみた。
以外なことに普通に会話ができた。

男は都内のフリーターで、高田馬場の回転寿司屋の店員だと言っていた。
また「これは夢なんだよな」とも言っていた。

俺も自分の身の上をある程度話して、とにかくここはなんなのか尋ねた。
男は「俺もわからないよ、なんか映画のソウみたいなシチュエーションだよな」とか言って笑っていた。

俺はソウは観ていないからわからなかったが、まあ男の余裕そうな雰囲気から少しずつ変な緊張は解けていった。

しかしその後、突如鉄格子にはめられた扉が開くと、顔全体を覆う尖った帽子を被った、黒づくめの子供のような背丈の連中がなだれ込み、一番扉の近くにいた若い女を引きずっていった。

女はなぜか無言で無反応だった。
しかし2、3分もしたころ、女が連れていかれたであろう廊下の奥から「ぎゃあああああ」という物凄い絶叫が聞こえた。

牢内は騒然となり、寿司屋の男の顔からも余裕は消えていた。
すぐにさっきのチビ達がまたやってきて、また別の女を引きずっていった。

そしてまた絶叫。

俺たちはパニックになり、出口を必死で探したが、そんなものはなかった。
そんな具合に男女計四人引きずられていったところで俺は目が覚めた。
そんな夢を一月のうちに四回見た。

夢は連続しており、前回目が覚めた直後のシーンから始まる。
毎回数人ずつ、チビ達に引きずられていく。
そしてもう帰ってこない。

寿司屋の男は三回目に引きずられていった。
残る人数はあと三人。

「次にあの夢を見たら俺が引きずられていく番じゃないか」と眠るのが怖くなった。

この話をバイト先の店長にしたら、「小学生のころの同級生が寺に嫁いでるから、その寺を紹介してあげる」と言われ、その日の夜に寺に連れていかれた。

住職は一通り俺の話を聞いてくれたが、「そんなこと言われても私にはなにもできない」「そんな話は聞いたことがない」と頼りない返事しか返ってこなかった。

落胆した俺だったが、住職は何かの足しになれば、とお札をくれた。

住職が若い頃に先代から譲り受けた大切なお札のうちの一枚だとか。
俺は藁にもすがる思いでそれを受け取り、枕元に置いて寝ることにした。

あと、教会に行ってなにかおまじないみたいのをしてもらったり、占い師に魔除けのアドバイスをもらったり、とにかくできる限りツテをたどっていろいろしてみたところ、もうあの夢を見ることはなくなった。

どれが効いたのかわからない。
もしかしたら本当にただの夢だったのかもしれない。

一応今でもお札と魔除けの品は枕元に飾って寝ている。
怖いから。