昔、小さなマンションの三階に住んでた。

他の階は四部屋だったんだけど、一階は郵便受けや駐輪場があったんで一部屋しか無かった。
その一階には所謂DQNカップルが住んでた。
男の方はまだまともだったんだけど、女が酷いヒス持ちで、喧嘩や言い争いなんかをすると女の喚き声が三階まで聞こえてきた。

二人は週に一回位の割りあいで喧嘩をしてたんだけど、男は声が小さいのか、いつも聞こえてくるのは女の喚き声だけだった。

大体の流れは、女喚く→男無言→女喚く→男無言→女が絶叫してその後、「ガン!」とか「ゴン!」みたいな、壁に物が当たる音がしてその後静かになる、というパターンだった。

ある日曜日の夕方、また女の喚き声がした。
実はその前日にもこいつらは喧嘩してて(つまり二日連続)「今日もかよ・・・」とうんざりしたんだけど、その日はちょっと違ってた。
いつもは言われる一方だった男が反撃したんだ。

何度か女が喚いた後、初めて男の怒鳴り声が聞こえた。
怒鳴り声が止んですぐ、建物中に響くような「ご~ん!」という鈍い衝撃音が音を聞いた瞬間、それが何の音なのかすぐ分かった。
男が女の頭を柱にぶつけた音だった。

この「ご~ん!」の後、突然何も音がしなくなったんで女が死んでしまったんじゃないか・・・と(全く無関係なのに)本気で焦った。

「パトカーが来る、どうしよう・・・」と思ったり部屋の中ぐるぐる歩き回ったり・・・。

まあ、結局女は死んでなくてパトカーも救急車も来なかったんだけど、あの「ご~ん!」という音とその後の不気味な静寂は忘れられない。