以前オカルト話好きな出入りの業者さんと意気投合し、幾つか教えてもらった話の中に山に関するもの(?)があった。

その業者さんの納品先の、とある会社の担当さん。
ツーリング好きでバイクであちこち走っていたらしい。
ただしその人は別にオカルト好きではなく、肝試しや心霊スポットめぐりの類に行ったことは無かったそうだ。

それでも何か怖い体験をしたことは無いか?と訊ねたところ、怖くは無いが奇妙なことはちょくちょくあるという。

山道を走っていると、いつの間にか知らない道に迷い込む。
たいてい一本道なので道なりに進んで行くと、思ってもみなかった場所へ出る。
そんなことが度々、どこの山という訳でもなく山道を走っていると起こるという。

そのせいでツーリングの予定が大幅に狂ったことも、一度や二度では無いそうだ。
通り慣れない道ならば、地図に載っていない旧道や私道に入り込んでしまうこともあるだろう。

しかし走り慣れた、脇道など無いと判っている道でさえ、気がつくと知らない道に入り込んでいることがあるという。

しかも出る場所が、橋を渡った記憶も無いのに谷の向こう側だったり、ずっと下っていたはずが山の頂上に出たり・・・。
それを聞いて業者さんは、彼が脳の記憶や認識の機能に何らかの障害でも抱えているのではないかと、本気で心配になったそうだ。

しかし当人はそんな心配などどこ吹く風で、最近では見知らぬ道に迷い込んだら次はどんなところへ出るのか楽しみになってきた、と言い出す始末。

そんなある日、業者さんがいつものように納品でその会社を訪れると、担当さんとは別の人が応対に出てきた。
連休明けから担当さんはずっと出社しておらず、連絡も取れないという。
警察へ捜索願も出されたが、結局その担当さんは行方知れず。

「ツーリング先で事故でもあったと考えるのが普通なんでしょうけどね。私にはどうも、彼が知らない道に迷い込んで『どこか』へ辿り着いてしまったんじゃないか、って気がしてならないんですよ」

業者さんのこの言葉に、オカルト話好きというよりどこかで彼に生きていて欲しいと願う業者さんの気持ちが感じられた。