夫が、私のしている家事や炊事、二人で交わした約束事を一切覚えてられない人だった。

結婚したら家を建てるという約束も「そんなこと言うわけがない!」と言い、私が家事や炊事をしてるところを見たことがないと言う。
とにかく夫の記憶では家事も育児もすべて同居の姑と夫が賄ってきたことになってる。

バカな私はそこで張り合うのは大人気ないと聞き流していたが、夫が本気でそう思ってることにやっと気づいて、色々思い当たることを調べてみた。

夫は15の時から飲酒してて毎日1~1.5升は飲む生活をしており、飲む量や頻度、手の震え、言動が全てアルコール依存症に基づいてた。
病院に務めてる姉も夫を見て「ありゃ依存症だな」と言ってたし、本人も健康診断で医者にかかることを勧められたとか。

アルコール依存症は忘れるのではなく「そもそも記憶に入らない」らしい。
自営の夫はほとんど1日中飲んで、親の前では飲まない代わりに私の前でずっと飲んでるから、私のことだけが記憶に「残らない」みたいみたいだった。

私を見て真顔で「お前は・・・誰だっ!」と叫んだこともある。
そして子供が自立するのを待ってやっと離婚話を出したけど、夫には青天の霹靂。
何が原因か全く分からないと言う。

「何もしないお前を20何年も養ってやったのに、この仕打ちか?!」

本当に驚いた様子で責めるから「逆にそんな何もしない女を養う必要はないでしょう?」と返した。

ちなみに私は働いていたが、夫は私が働いていたことも「知らなかった」そうで、毎日子供たちに「お母さんはどこで何をしてるんだ?!」とキレてたと子供たちから聞いた。
なかなか納得してくれなかったけど、夫の親戚は私の悪口を聞かされていたので、あんな早く女追い出せと推されてやっと判を押してくれた。

私は一人になってそれなりに苦労したけど何とか生活している。
そしてしばらくして子供たちから不思議な話を聞いた。

夫が朝目が覚めると、着る服がいつもみたいに布団の横に出てないという。
風呂上がりに必ず出ていたバスタオルや着替えも出なくなった。
寝る前に枕元に置かれていた白湯も置かれなくなり、フカフカだった布団も敷きっぱなしでカビ臭いとか。

そして食事も和洋中と品数が豊富だったのに、今では三日続けて同じメニューの1品。

新しいズボンも、買った次の日には自分の丈に合っていたのに、今では裾を折って履かなくてはならなくて不思議な毎日を送っているという。

さらにいつもは綺麗に整頓されてるタンスの中がグチャグチャで、スカッとしてた部屋も日に日にゴチャゴチャしてゴミだらけになったとかで、夫は泥棒が入っていると本気で言い出したらしい。

もうどの話もおかしくておかしくて腹を抱えて笑った。
おもしろいから早く誰かと再婚してくれないかなぁ。