俺が昔住んでた某県某町の田舎の話。

クソ田舎ってほどでもないけど、中学校と小学校にスクールバスが必須で、学区内の小学校の半分が全校生徒50人以下くらいの田舎。
母方のばあさんがそこに住んでて、ばあさんの兄弟が亡くなって、土地の権利がばあさんのものになって、なんやかやで俺ら家族がそこに新たに家を建てて、ばあさんと住むことになったんだ。

家建てて引っ越してしばらくしてから、その微妙な田舎で起きる妙なことに気がついた。

時折、夜になるとどこからか笛の音がするんだよ。
集落ってほどでもないんだけど、うちのある周辺にだけ聞こえる程度。
リコーダーとかじゃなくて、かと言って尺八って感じでもない。

聞いたことはないんだけど、オカリナとかに近いんじゃなかろうか?って音。
それが、時折夜になるとどこからか聞こえてくる。
最初は近所のじいさんが吹いてるもんだと思ったけど、聞こえてくる方角はその時々で結構変わった。
まあそれも特には気にしてなかったから家族に話すことも特にしなかった。

で、そんな笛の音に気づいてからしばらく経った頃、もう一つ妙なことに気づき始めた。
笛の音が聞こえた深夜になると、小火が起きる、事故が起きる。
最初は偶然だと思ったけど、何度も重なるし、消防の半鐘の音がしない夜でも、翌日「どこそこで事故があった」だの「誰々さんちの納屋が燃えた」だの話が出る。

それでもまだ偶然だろ・・・と思ってたんだけど、数年経っても同じことが起こる。
ただ、笛の聞こえてくる方角と小火とかのは一致しない感じだった。

そうやって何度も重なると何かあるんじゃないか?って思うわけで、ばあさんに聞いてみたんだよね、「時々笛の音が聞こえるけどあれ何?」って。

ばあさん曰く「あれはこの辺の氏神さまみたいなもんでね」って話してくれた。

こっからがちょっと長いかも。
両親(特に母親はここ出身なので)は知ってたらしい。
姉も笛の音には気づいてたって事でばあさんが話してくれたこと。

・あの笛は悪いものを祓うために氏神様が時折吹いているもの。
・ばあさんが子供の頃も、ばあさんのばあさんが子供の頃からもずっとあるらしい。
・そうやって笛の音が聞こえたあとは必ず悪いことが起こる。(小火とか事故とか)
・でも笛のおかげでこの辺(俺の住んでる周囲)には何も起こらない←これは実際不思議なことに確かに何もなかった。
・氏神様とは言ってるものも、何の神様かはよく分かってない。
・ばあさんたちはコリブエさまって呼んでる。(漢字は知らない)
・この辺では暗黙の存在みたいになってて、みんな笛が聞こえると「あ、なんかあるな」って思ってるらしい。
・だけど、時折「嘘笛」というのをやらなきゃいけないらしい。

この嘘笛ってのは、いつもコリブエさまが笛で守ってくれてるのに感謝したり、時々はコリブエさまに休んで頂こうというのでいつのまにか風習みたいに根付いたらしい。
それは、明確に決めたルールがある訳じゃないけど、コリブエさまを祀るというか氏神とするというか。
要するにコリブエさまに守られてる周囲の家の信心深いじいさまばあさまたちが、時々コリブエさまの代わりに笛を吹くというものでそれで感謝とお礼とかを兼ねるそうだ。

で、これをやるのは完全に各個の気分でやってるらしいけど、嘘笛をいつやった、だれがやったというのは決して明らかにしてはいけないそうなんだ。(とは言っても明らかに隣の家とか分かってしまう時もあるけど、そこには触れないようにするのが不文律)

で、ばあさんはじいさんが生きてた頃にはじいさんが吹いてたけど、じいさん死んでからは参加してないそう。

笛も実際オカリナだそうだ。
俺が聞いてた笛の方角にばらつきがあったのも、多分「嘘笛」をどこかでやってたのを聞いてたんだろう、とのこと。

あと、確かに笛の音を聞いた時は小火がよくあったけど、必ず起きてた訳ではなかったらしい。
この辺は話聞くまでは百発百中だと思ってたけどなかった日もあったらしい。
そうやって時折匿名の完全気分の持ち回りの「嘘笛」を俺たちは聞いてたらしんだが、ばあさん曰く「今でも時々は本当のコリブエさまが吹いてらっしゃるし、その時は音色が違うんだよ」と。

ばあさんは亡くなっちまったし、今はもうそこを離れて暮らしてるから分からないけど、俺が家族より先に上京して家を出る頃までは、まだ笛の音は時々聞こえていた。
最後まで本当のコリブエさまの笛の音はわからなかったけど・・・。。
そんな、俺が昔住んでた田舎の話。