以前書いた病院を辞める直前の話。

日勤で普通に朝出勤すると、職場が『飛び降りがあった!!』と大騒ぎ。
その病院は糖尿の人の散歩の為、屋上は常時施錠していなかった(その後、時間解放になったらしい)。
飛んだのはまたもや産婦人科の患者様。

妊娠中毒症で入院中、マタニティブルーやら旦那の浮気やらで、ちょっとアレになってたらしい。
ドクター専用駐車場(ナース用は無かった。畜生)に落ちたブツはすでに回収されていて、「もうちょっと早ければ見れたのにね~」と同僚。
見たくねーよンなモン。

騒ぎも収まりかけて、仕事に戻りかけたら、警察が病棟に聞き込みに来た。

制服着たお巡りさんじゃなく、ブルゾンみたいなの着たホントの刑事さん。
『ウチの病棟関係無いじゃん?』とか思いつつ、手を動かしながら聞き耳立ててると、どうやら「誰か遺体の側に行って、何かやったか?」というのを調べてるらしい。

『おお、もしかして他殺の疑いが!!』とか思ってワクワクしてたら(←サイテー)、隣の病棟(例の産婦人科)からもう一人の刑事さんが・・・って思ってたら、そのちょっと前に俺の従姉妹と結婚した、県警の捜査一課の刑事さんだった。

お互い思わぬ所で会ってビックリ。

『あ~、その節は』

『イエイエとんでもない』とか大人の挨拶をしたあと、ちと雑談。

俺『なんか、アヤシイ所でもあるんすか?』

刑『いや、不審死は一応調べるから』

俺『不審なんすか?』

刑『事故でも自殺でも、はっきりする前は全部不審死』

俺『でも自殺でしょ?かなりイッちゃってた人みたいだったし』

刑『さっき聞いた。そうみたい』

その後、急に義理のイトコの目から、刑事さんの目になった。
鋭い鋭い、はっきり言ってビビッた。
声まで2オクターブくらい低くなった。

刑『ところで、本当に誰も御遺体に手を触れてないよね?』

俺『(ちょっとビビりつつ)いや、救命できそうだったらなんかするでしょうけど・・・』

刑『いや、そう言うことじゃなく・・・』

雰囲気はオッカナイままなのに、なんか困ってるカンジ。

刑『飛び降りた人、まっすぐ落ちて、体の全面がまっ平らになっちゃった感じだったんだよね』

俺『まあ、屋上から飛び降りたんなら・・・』

刑『その拍子でだかなんだか、お腹の中の赤ちゃんまで、外に飛び出しちゃったみたいなんだ』

俺『うげ・・・グロい』

刑『破裂はしてなくて、股間から飛び出してたんだけど・・・』

刑『・・・5ヶ月くらいの赤ちゃんって、動くかな?』

話がトートツに変わって、ハア?状態。

俺『胎動とかはするでしょ?』

刑『いやそうじゃなく・・・ハイハイとか』

俺『はいはい?』

刑『自力で動けるかって』

俺『無理でしょ?』

刑『だよね・・・』

俺『なんで?』

刑『飛び出した赤ちゃんが・・・お母さんの横まで、移動したのかなって』

俺『・・・なんかの拍子で、そうなったんでしょ』

刑『まあそうなんだろうけど、水(羊水?)が、ナメクジみたいに、上に移動しててさ・・・股間から、自力で這ったみたいに』