ある日、地元から離れたとある山の中の神社に行った。

急な石段を上がると、神明造りの立派な社殿があり、俺のお気に入りの神社だった。

いつものように拝殿の前でお参りを済ませ後ろを振り返ると、目の前に人の顔があった。
人差し指一本分の距離くらいで人の顔があったのだ。

「あ、あ・・・」っと、声にもならない声をあげつつ、俺は後ずさりした。

後ずさりして離れた位置からそいつを見ると、そいつの黒髪はスラッと長く、女物の服でスカートを履いた女だった。

女はさっきからずっと俺を見つめていた。

そして、俺に指を向けたかと思うと、口をパクパクさせながら、社殿背後の山の森の中へ裸足で去って行ってしまった。
女が履いていた赤い靴が、その場に残っていた。

その日以来、俺はあの神社には一度も行っていない。

今から三年前の体験。