数年前の話。

友人グループの中にカウンセラー志望のA子がいた。

そして同じグループの中に一見ものすごく明るい鬱病のB子がいた。
普段はものすごく明るいB子が一度ものすごくふさぎこんだ時期があった。

私達はそれまで「B子が鬱なんて、ちょっと信じられん」と思ってたけど、その時にやっと「本当に鬱病なんだ」と思った。

そして私の出番!とばかりにはりきるA子。
しかしB子を頑張れ!と励ましたり、説教したりとおよそカウンセラ志望とは思えない行動をしていたので、さすがに止めた。

鬱病患者は励ましてはいけない、そのくらいカウンセラ志望じゃなくたって知っている。

それに対してA子の持論はB子のは鬱じゃなくて擬似鬱。
ここでガツン!と叩いておかないとだんだん本当に鬱病になってしまう。

実際自分が高校のときにああいう状態になった時、友人らが私を励ましてくれたから私は頑張れた。

「そんな自分の経験を生かして私はカウンセラになりたいの。私ならB子を助けられる。と全く聞く耳持たず」

ある程度は阻止したものの、完璧には防ぎきれなかった。

しばらくしてB子はまた明るくなった。
ただなんとなく以前とは違い、どこか張り詰めたような雰囲気をA子以外は感じていた。

明るいというよりは躁状態にちかい感じでテンションが変というか、言葉にはできない異様さがあった。

そしてほどなくして自殺してしまった。

B子の自殺の原因の一端は絶対にA子だった。
それはグループの皆がそう思った。

しかしA子だけはそう思わず、「私ではB子を支えきれなかった。私が未熟だったから、B子のヘルプをちゃんと聞いてあげることが出来なかった」と完璧な悲劇のヒロイン状態。

それこそ擬似鬱状態になってみたり、今からB子に会いにいくのと夜中に電話をかけてきたり。
さすがにみんな引いて距離をおき始めた。

しかしA子の脳内では「B子を助けられなかった私をみんなは責めている」と変換され「友人の死という辛さを乗り越え、カウンセラになり人を助ける私」という理想が出来上がっていた。

「私がカウンセラになることは彼女に対するはなむけでもあるの」

それが口癖になっていた。

その後A子はそっち系の大学院に進み、今年の春からは非常勤の仕事や、スクールカウンセラーみたいな仕事をいくつかかけもちしているそう。

ちなみに中身は全く変わっていないと人づてにききました。

自殺の数日前B子が言った言葉。

「自分のものさしでしか人をはかれない人間はカウンセラーになんてなっちゃいけない」

もしB子が現在のA子のことを知ったら、どんな気持ちになるだろうかと思うと後味が悪い。