知り合いの話。

秋の終わりに、一人で山中の薄野原を散歩していると、上空から聞いたこともない奇怪な鳴き声が聞こえてきた。

「ヒョーン、ヒョーン」という金属的な響き。

どんな鳥かと思い空を見上げると、予想外の物が目に入ってきた。
二十人ほどの真っ黒い人影が、空の高みを飛んでいた。
平泳ぎで。

ズングリとした体型で、器用にスイスイと空中を移動している。
時折顔を回して「ヒョーン」という声を上げながら。
唖然として見上げる内に、群影は山に掛かった雲の間に消えていったという。

学校の先生にこの話をしたところ、何とも不可思議な答えが返ってきた。

先生「それは恐らくカワワロだろうな。奴ら、春夏は下流の河口に住んでいて、冬になると空を飛んで山奥に戻るんだと。山に入るとヤマワロって呼び方に変わるそうだけどな。浜から山へ飛ぶ間に、そんな鳴き声を上げると伝わってるぞ」

河童って空も飛ぶのかよ!
大いに驚いたのだそうだ。