知り合いの話。
彼はかつて漢方薬の買い付けの為、中国の奥地に入り込んでいたことがあるという。
その時に何度か不思議なことを見聞きしたらしい。

逗留した山村で人死にが出た。
まだ若い男性だった。

その時に付いてくれたガイドの知り合いだというので、彼も葬儀に参列した。
僅かばかりの参列者の前で、遺体は荼毘に付された。

知り合い「何とも言えない、変な気分になりましたですよ。遺体がですね、赤色じゃなくて、緑色や青色の炎を上げて燃えるんです。脂の焼ける臭いに混じって、酷く鼻を刺す刺激臭も出ていましたっけ。・・・ひょっとしたら、重金属か何かの汚染じゃなかったかと」

宿に帰ってガイドにそれとなく言うと、ガイドは変な顔をした。
笑っていないのに無理矢理笑っているかのような、どこか怖い顔。
しばらく経ってから、言葉を押し出す。

ガイド「知ってるか。ここはね、外の人間からは◯◯って呼ばれてる。誰も正しい村の名前なんかで呼んじゃいない」

よく聞き取れず、意味もわからない。

知り合い「◯◯ってどういう意味なんです?」

ガイド「そうだな、意訳すると“早死にする地”って意味だよ。ここじゃ男は生きて三十歳を越えられないんだ。女もまず長生きできない。どちらにせよ早死にさ。どこかのお偉いさんの決定で、余所に移り住むことも禁じられている。前はそんなこと無かった。ある年、ガタイの良い男たちがここに来て、奥の山で何かして行ったらしい。何をしたかなんて誰も知らない。知ってた者は皆死んでしまった。綺麗な色の炎を上げて。こんな風になったのはそれからだとさ」

それ以上の詳細は聞かず、早々にその村を発ったのだという。