現在では簡単に聴くことが出来るのだが、かつて自殺ソングとまで言われた曲があるのをご存知だろうか。

歌詞が暗く、それるのだが、少なくとも世界中で100人以上の人が、この曲に関わって自殺をしているのです。
みなさまはどのように考えられるのだろうか。

『暗い日曜日』は、1932年にルッツオ・スレスが作曲したシャンソンの名曲である。
だが、これほど自殺に関わった歴史を持つ曲は、他に存在しないだろう。

ハンガリーの首都ブダペストで、若い青年がこの曲の演奏をバンドに頼んだ。
彼はシャンパンを飲みながら曲を聴いていた。

その後、勘定を済ませた彼は突然ピストルを取り出し、こめかみを撃ち、その場で自殺をした。
ニューヨークでは、あるタイピストが自室でガス自殺をした。
遺書が残っていたのだが、そこには自分の葬式の時には『暗い日曜日』を演奏して欲しいと書いてあった。

ベルリンでは、若い男が首吊り自殺をした。
足元には『暗い日曜日』の楽譜が落ちていた。
80歳の老人がこの曲をかけながら、7階から飛び降り自殺をした。
14歳の少女がこの曲の楽譜を手にしたまま、川に飛び込み自殺をした。

なかでも不可解な自殺は、ローマで起こった。
自転車に乗った少年が、老婆がこの曲を歌っているのを聴いた直後、自転車を降り、その老婆に持ち金の全てを手渡し、そのまま陸橋から下の線路へ身を投げて自殺してしまった。

当時の精神分析医や心理学者達は、その原因をつきとめる為にこの曲を研究しだしたのだが、結局何も判らなかった。
その間にも自殺者は増加するばかりで、イギリスBBC放送局はこの曲の放送を全面的に禁止した。
続いてフランスやアメリカの放送局も、次々とこの曲の放送を禁止した。
第二次世界大戦の始まる直前の出来事である。

ロシュフ・ゲームという音楽家をご存知だろうか。
第二次世界大戦中、ユダヤ人だった彼は、バイオリンの名手だった為に収容所に送られることを免除され、ナチスの親衛隊付けのバイオリン奏者として、若い親衛隊員を慰安し続けた。

ある時、親衛隊員の中から異常な数の自殺者が出始めた。
酒場で酒を飲んでいて、突然ふらふらと外へ出て行って、拳銃で自殺するというのだ。
ゲシュタポが調査した結果、何とゲームが『暗い日曜日』を演奏し続け、ユダヤ人迫害行為と戦争にまだ慣れ切っていない若い兵士の、感受性に揺さぶりをかけていたことが判明したのである。

ゲームは即座処刑を宣告された。
彼は最後に、「音楽すらも、ユダヤの怒りだと知るがいい。君たちの命は、僕の指先だけで操られたということを忘れるな」という言葉を残した。

この事件の書記とゲームのサインは、エルナリッチユダヤ博物館に現存している。
彼は優れた演奏家であり、意図的に他人を音楽で暗殺したという、史上唯一の殺し屋だったのである。