あれは私が東京の某A区というところに住んでいたときの話です。

東京のA区は場所柄、比較的貧しい人が多く、私の住んでいたエリアも例に漏れずトラブルが多くて、あまり柄の良い地域ではありませんでした。

私の部屋はぼろいアパートの一階の角部屋でした。
その隣に住んでいたのはフィリピン人女性で、近所の噂ではオーバーステイではないか?といわれておりました。

ある日、私が職場から帰宅して部屋で一日の労をねぎらう意味も込めて、ビールとさきイカで晩酌をしていたときのこと。
隣からけたたましい音とともに女性の悲鳴が聞こえてきました。

かねてから男性関係の揉め事やら借金の取立てやらで、騒がしくしていた隣人でしたので「またか」って感じで、気にも留めませんでした。

しかし、その夜は様子が変だったのです。
いつもなら暫くすると相手の男性が出て行ったり、逆に女性が出て行ったりして小一時間で収束していたのに、その日はいつまでたっても喧嘩が途絶えることはありませんでした。

そしてしばらくの間、悲鳴+騒音が続いた後、私は聞いてはならない音を聞いてしまいました。

それは銃の発砲音です。

私は海外の射的上で実弾を打ったことが何度もあるので、一発でそれが銃声であることが分かりました。

ゴトっというなにか重いものが床に倒れる音と同時に、男性の「うおおおおおおおおお」っていう雄叫びが聞こえてまいりました。
そしてそれに続けて更にドーンという拳銃の発砲音が響き渡りました。

これはヤバイ。

そう思った私はすぐ警察に連絡しました。
数分後警察はやってきました。

大家さんとともに、隣の部屋を空けてみたのですが、先に入ったポリと大家さんは首を傾げています。

なんと隣の部屋は家具もカーテンもなにもないガラーンとした空き部屋なのです。

「何もないじゃないか」

面倒くさそうな顔をしてそう警察は私に言いました。
大家さんは大家さんで「畜生!あの外人、夜逃げしやがった」と怒りをあらわにしていました。

結局その夜の出来事は、私の勘違いということで済まされてしまいました。

しかし、翌日の新聞の朝刊の見出しを見て私は唖然としました。

『パブでフィリピン人女性射殺される。殺害した男性自殺。男女関係のもつれか?』

被害者はNという女性で、確かに私の隣に住んでいた人でした。
そして殺害された日時は、昨日私が部屋で一杯やっていたときとほぼ同時刻の、23時40分。

彼女は私に何を伝えたかったのでしょうか。
それは今も謎のままです。

そんなこともあり私はA区のそのアパートを引き払い、今は東京の某E区の別なボロアパートに住んでいます。

ここでも色々と不可解な現象に遭遇したのですが、それはまたの機会に・・・。