去年の秋ごろ、免許の合宿で関東の某内陸県に行ったときの話。

卒検前の丸一日休みの日。
俺は気分転換のために寮の自転車を借りてちょっと遠出した。
町中から少し離れると、見渡す限りの田んぼと遠くに見える高い山っていうまさに田舎な風景が広がっていた。
そういう風景はほぼ初めて見る俺は、ちょっとした冒険気分でワクワクしながら走ってたんだ。

2時間くらい走ってそろそろ帰ろうかと思っていたところで、遠くの田んぼの真ん中に、木が生い茂っていてポッコリと小さな山みたいな場所(表現できなくてすまん)を見つけた。

似たようなのはそれまでも何度か見たんだけど、特に大きかったそれに少し興味が湧いて、近づいて行ったんだ。
で、道なりに進んでポッコリ林の正面に着くと、ボロッボロの鳥居が建っていた。

「ああ、ここは昔は神社があったんだろうな」と思った。
けど、長い間誰も立ち入ってない事が容易に想像できるくらい荒れていた。
まぁ少なくとも、俺が住んでいる地域ではそんなミステリアスな風景は100%見られないので、何かの記念にと思ってスマホで写真を撮った。

で、スマホの画面に視線を落として写真がきちんと撮れているか確認してたら、前方でガサガサッと音がした。

顔を上げると、青と緑のチェックシャツとジーンズ姿の30代くらいの女の人がこちらに背を向けて鳥居の奥に入って行くところだった。

俺が顔を上げたのと同時に向こうは背を向けたので、表情はわからなかった。
瞬間的に「え?人いるの?」と思って唖然としているうちに、女の人は何も言わず奥へ消えて行った。

最初は、カメラのシャッター音に気付いて神社の管理者が出てきたのか?と思った。というか普通の神社ならそうだろう。
でも、そこは入口らしい場所も無い(入れるような道の作りじゃない)上に、周囲に建物も無く、鳥居はボロボロ、その奥は背の高い草が生い茂っていてどう見ても管理されてない。
しかも時間は朝6時前。

いくら考えても、あの時、あんな場所に人がいる自然な理由がない。

そう思うと俺は急に怖くなり、とりあえず鳥居に向かって謝って写真を消去し、立ち去った。
そしてもっと怖かったのは、卒検に合格した後にその場所をもう一度見ようと思って探したんだけど、そんなポッコリ林はどこにも無かった事。

あの場所、あの人は一体何だったんだろう。