木枯らしが吹く季節になると、今から15年ほど前に焼き芋屋のバイトをしていた頃を思い出す。
軽トラックにスピーカーつけて「やきいも~」ってやつね。

夜の20時位に一軒家の並ぶ団地を流していた。
緩やかな下り坂のはるか先、100~150m位先はT字型の突き当たりで、電柱が一本あり街灯が灯っている。
突き当たりの先は林で、かすかに揺れる枝が見える程度その奥は闇。

ぼんやり見える突き当たりの街灯の下に、突き当たりの左側からスカートをはいた黒い影の女の子がたーっと走ってきて、こっちを見る。
指を指し飛び跳ねて、今来た方へ手招きをし、早く早くというような動きをする。

その子が出てきた方から親であろう二人の影がゆっくりその子に近づく。
父親であろうか、女の子はその手を握りぶんぶん振ってる。
早くこないかなーってのが離れていても見える。

少しずつ近づく軽トラ。
わくわくして待つ女の子と頭を撫でている親。
30m程手前まで近づいたら、その影は消えてしまった。
それまでは見えていたのに、人の影と突き当たりの木々との闇の濃さが一緒になったような感じで消えてしまった。

後でよくよく考えたら、街灯の下に居たのに何で影みたいな人だったのかってのに気がついた。
服の色や形が見えるはずだろうにな。