不思議なことだったんだけど話を一つ。

新潟の震災でダメージを負った、山の田んぼを見に行った時のこと。
田んぼの半分が下に崩落したり、真ん中にザックリ亀裂が開いてたり・・・。
それを見たあと、今度は田に水を引いてる山の奥の方を見てこようってことになり、入山したんだがこっちもまた酷い有様。

山崩れでホースが埋まってたり、ホース通り越して通路まで埋まってたり、それはそれは欝に入らせていただいて、「まあこれはその内に何回かに分けてやろうね」と当座の逃げ文句を吐いて、その場は下山しようってことになったんだけど、俺は自分でやってたシイタケの苗木がどうなったかも気になったんで、一人でそっちを見に行くことにした。

結果から言うと、苗木のいくつかは崩れ落ちてたけど、多くはなんともなかった。
我ながらよく積んだもんだと思った。

その帰り道、ふと目にした所に結構なサイズの木が横倒しになってたのを見たんだが、なんかがそこをチョロチョロしてるのがいる。

なんだよ?と思ってみたら、それは狢?(むじな、狸みたいなもん)。
気になってよく見てみると、どうも横倒しになった木と泥に綺麗に入り口を塞がれて、巣穴が埋まっちゃったらしい。

小さいのは隙間から出入りしてるけど、中にでかいのがいた。
普通だったらそんなもん(害獣)無視してるんだけど、その時は被災者同士ってメンタルもあったのか、なんとなく泥をどかしてやり、どうせやるならとことんやってやろうじゃないかと家からチェーンソー持ち出して、木をぶった切って巣穴を完全解放してやった。

そんなことがあってから一週間後の次の日曜。
次の年の収穫もどうなるか知らんが、とりあえずほっとくわけにもいかんと、再び入山して水路を見に行った。

するとあらまあビックリ、土砂崩れの泥が消えてなくなってる。
ホースを埋めてたのどころか通路を埋め尽くしてたダンプ半杯分くらいのやつまでもが・・・。
一緒にいた爺ちゃんや親父は「もう一回崩れて崖下に落ちたんじゃね?」というありえない結論に落ち着いて、とりあえずラッキー!と場を締めくくったけど。
オカルトだし恩着せがましい話でもあるけど、俺はもしかしたらあの狢共がなんかしたんじゃないか、と思った。
それと同時にこうも思った。

「もしあいつらの仕業だとして、それくらいのパワーがあるなら自分達で巣穴なんとかできたんじゃね?」と。