友人と某観光地に旅行した時のこと。

その日は山の上の駅近くのホテルに泊まった。
私はいつもどこかに泊まると、次の日一人で早起きしてそこら辺をウロウロ散歩することにしている。

次の日の朝も早起きして、一応友人も誘ってみたけど誰も起きてくれず、いつも通り一人でウロウロすることにした。

前日までの雨も止んでとてもいい天気だった。

駅の周りのホテルとか民家とかの間をウロウロしていると、森の中へ続く細い道を見つけた。

私はこういう細い道を見つけるとついフラフラと入り込んでしまう病気にかかっているので、フラフラとその道に進んで行った。

その道は森の中の結構急な斜面をぐねぐねと蛇行しながら下っていく道。
路面はコンクリート、両脇はフェンスで囲まれていた。

昨日の雨が染み出して小さな川みたいになってるところもあったけど、朝の木漏れ日を浴び鳥の声を聞きながらさわやかな気分で下って行った。

ふと斜面の下の方を見ると、トタン屋根の小さな小屋みたいなものが見える。
小屋といっても屋根があって低い板塀に囲まれているだけなのだが、こちらに背を向けて建っているので、中に何があるのかは分からない。

私はこの道はあの小屋に繋がっているもので、あの中にはお地蔵さんとか板碑とかそういうものがあるのだろう、と考えた。

ところが道は小屋には繋がっておらず、そのまま麓まで下りてしまい「◯◯駅近道」という看板が出してあった。

なるほど、この道はそういう道だったのね、と思い、ホテルへと引き返すことにしたんだが、やっぱりあの小屋が気になる。
そこでフェンスを乗り越えて小屋を正面から見てみることにした。

雨でぐちゃぐちゃになっている斜面を慎重に歩いて正面に出ると、屋根の下にはコンクリートの土台、その土台の前の石段はだいぶすり減っている。
中には左右に一体ずつの石像、真ん中に2つの石の祠?一体の石の狐、花瓶、名前が分からないんだけど、お供え物をする台みたいなやつ?があった。

石像は詳しくないのでよく分からないけど、菩薩とかそういうのだったかな。

石段がすり減っていたわりには、花瓶とか台とかは倒れて花は枯れているし、落ち葉も積もっている。
最近お参りした人はいないようだった。

それがどういうものなのかは分からなかったが、これも何かの縁だと思って、倒れていたものを直し、台の上に乗っていただろうお皿や瓶子を正式な並べ方が分からないけど、それらしく並べた。

台の後ろにこけしが倒れていて、それも直そうと手に取り、何気なくその背を見てぎょっとした。
そこには、「つれていかないでね」と書いてあった。

背筋がざわっとして一気に冷や汗が噴き出した。

私は若干パニックになりながらも他のものを手早く直し、手を合わせて一枚だけ写真を撮らせてもらいホテルに逃げ帰ってバイキングの美味しい朝食をもりもり食べた。
金山寺味噌、初めて食べたけど美味しかった。

その後、ホテルを出て駅前の土産物屋で買い物をした時、レジのおばあさんにこれこれこういうものを見たんですが、あれって何でしょうね?と聞いてみた。
おばあさんは「あー、あれはねえ・・・地元の人の信仰の・・・こう・・・お祀りしてあるものですよ」と要領を得ない答え。

何か隠してるっぽいなー、と思いつつバス停に向かった。

友人と喋りながらバスを待っていると、バス停で案内をしているお兄さんが話に入ってきた。
そのお兄さんと談笑しつつ、私が見たもののことを聞いてみると、「あそこはねー、子供が死んだんだよ。あと首吊りもあったかな」と。
本日のセカンドインパクト。

詳しく聞いてみると、首吊りの方はよく分からなかったが、あの道は昔通学路になっていて、放課後に沢で遊んでいた子供が土砂崩れに巻き込まれて亡くなったらしい。
怖かったけどその後何があるという訳でもなく、むしろ歩き回ったおかげか前日までいまいちだった腹の調子が良くなったくらいで、旅は無事に終わりました。

写真も一応あるけど人が亡くなった所だし、そんなに昔の話でもないようなので、ここでは控えます。