俺の通ってた中学校まで行く途中に、やたら高い壁(?)に囲まれた家があった。
友人とその家の前を通るたび、「へんな家だよな」と話していた。
なにしろ門以外、すべてが高い石の壁に囲まれており、しかも、それより高い木々がはみ出していて、まるで森みたいになっていたんだから。

でも表札はあるし、(すごい難しい漢字で、読めなかった)確実に誰かの家ということは分かってた。
でも、住んでるのがどんな人か、というのは、中学三年まで知る術がなかった。

中学三年のある日。
クラブの朝練の為、早朝6時くらいに一人で学校に向かっていた。
そしたら途中で、事故の現場に遭遇したんだ。

あの石の壁の家に、トラックが派手に突っ込んでいた。
幸い運転手は無事だったみたいで、トラックから降りて携帯で何かを話していた。

で、あの城壁みたいな石の壁には、事故のせいで派手な穴が開いていたんだけど、歩くスピードを落として、ちょっと中を覗いてみた。

中に居たのは、数え切れないほどの大量の人間。
男か女もわからない。
みんな、カクカクした妙な動きで何かをしていた。

??・・・と中の状況が理解できないまま、でも足を止めるわけにはいかず、そのまま学校へと向かったんだ。

その日の学校は4時間の日で、クラブも朝のみの日だったから、学校を出たのが12時くらいだった。

また、あの石の壁の家の前を通る・・・。
と、まだトラックが突っ込んだままだった。

えー、まだ片付けてないのかよー、などと思いながら近づいていくと、運転手が、トラックが開けた穴の向こうに向かって土下座してる。
何だろうと気になって、また歩くスピードを緩めて壁の奥を見たんだ。

・・・あれだけ居たはずの者達はただの一人もいなくなっていた。
代わりに、とてつもない大きさの人間?(上手く表現できない、申し訳ない)が一人だけ居た。
身長は、4メートルはあったと思う・・・。

びっくりして、というよりかは呆気にとられて足がとまってしまった。
トラックの運転手はひたすら土下座してる。
そいつは、カクカクした妙な動き(朝に見たあの人間達の動き)をしながら、巨大な家の柱に半身を隠して、もう半身だけで運転手を睨んでいた。
目がやけに大きくて、ぎょろりとしていた。

訳がわからないまま、俺はなんとなく、一瞬だけ運転手の方に目をそらしたんだ。

そして、もう一度前を向いた時、その巨大な人間が、運転手じゃなく俺の方を睨んでいることに気付いた。
柱をガリガリとかじりながら・・・。

途端、これ以上は見てはいけないと、慌ててその場から逃げたんだ。

その後、一日休みを挟んで、次の登校の時にはもう完全に石の壁は修理されていた。

俺がいくら考えたところで、あれが何だったのかは解らない。
もう、大分遠くに引っ越してしまったしね。
でも、一連の出来事が不可解すぎた故に、今でも鮮明に思い出せるよ。