建物が老朽化で完全に倒壊したため、20年前の話を投下。

スポットの温泉旅館は人の往来が少ない県道から更に入った所に1件だけあり、車で30分もかからない場所に栄えた温泉街がある。
なんでこんな所に?と言いたくなるような立地。

古い新聞によると、経営難から老夫婦が駐車場で焼身自殺をしている。
少しガラスが割れたり、壁に蔦が張い所々天井や床が抜けているが、アホに荒らされることもなく比較的綺麗な穴場スポット。

半地下にある小さい湯船の大浴場ではこんこん湯が湧き続け、ぬるいが夏ならちょうどいい温度なのを確認していた。

夏休みの深夜、あまりにも暇で以前廃道探検や林道探検をしていた時に発見した廃旅館にソロ凸。
今思えば頭おかしいと思うほどバイクで飛ばして行き、玄関に乗り付けた。

到着後、風呂場へ直行。

湯船を持参したタワシで掃除し、湯を溜めてる間に旅館内の散策を行った。
客室の6部屋は、押入れに布団が入ったままカビて凄くカビ臭い。
経営者の居住空間は当時の生活を感じさせる程物が残っている。
宿泊の記録ノートを発見し、見てみるとオフシーズンは数組/月という状況だったのが伺える。
冷蔵庫の中には悪臭を放つ液化した「何か」が封印されていた。

一通り探索したので、入浴し体に付いた埃を落とす。
水が出る井戸、水は出ないが水洗トイレ、温泉あり。
今度友達とキャンプでもするか?などと考えながら長湯してしまった。

風呂から上がり帰ろうかと歩を進めると、脱衣所で横にある鏡が気になった。
汚れているためタオルで拭いてみる。
多少曇っている箇所がある程度で、民宿などで見かける土建屋の名前が書いてある贈答用の鏡。

でも何か変だ?

写っているのはランタンに照らされる脱衣所とオレ。
しばらく眺めていると違和感に気づいた。
鏡に映る自分の瞬きが見える。
っていうか瞬きのタイミングが違う。

「う・・・マジ?キモ!」っと言い放ち玄関までダッシュ!

セルを回すもエンジンがかからない「これだからカワサキは!」と言いつつも、そのZXRは購入後セル一発だった。
風呂場の方から「う・・う・・・」といううめき声とズ・・・ズ・・・と何かを引き摺るような音!
押しがけをしようと思うも駐車場とすぐ前の道は未舗装路。舗装された道路は数百m先。
幸い緩い下り坂なのでギアを3速まで入れて汗だくになりながら何度かチャレンジするとバンッ!とアフターファイヤーを吐きながらエンジンが掛かった。

無事帰宅し、愛猫が出迎える玄関を開けると、愛猫がオレを見た瞬間毛を逆立て激しく威嚇。
近づくと「ギャー」と叫んだ後フー!と牙を剥く。

一旦外に出て起きているであろうDQNな友人にPHSで電話。
2コール目で出たので今から行くと良い、友人宅に着くと2階の窓から「入って」と言うので、キッチンの塩を握ってから友人の部屋へ。
適当な話をしながら、こっそり体に塩を振る。

30分ほど話をしてから眠くなったと告げ再度帰宅。
今度は愛猫がゴロゴロ擦り寄ってきたので無事落とせたようだ。

数日後、友人から相談に乗ってくれと言われたためファミレスへ。
どうやら友人の部屋内が霊現象が頻発しているらしい。
鏡の瞬きだけではなく、夜になると声が聞こえたり、物が落ちたり倒れたりしているらしい。
不気味なため夜は部屋に入れないとのこと。

オレの所為だwと思いつつも、適当に「家なりじゃね?」と言うと「鉄筋でも家なりって起こるのか」と納得したw