俺が小学校5年の秋。

郊外にある従兄弟の家(農家)に一家で遊びに行った。
従兄弟が、うちの柿の木に“呪いの柿”がなっているんだ、と言いだした。
“呪いの柿”とは何だと問うと、従兄弟の庭の柿の木の枝が1階の屋根の端まで伸びていて、大きな実がかたまってなっている。
その実が“呪いの柿”なんだそうだ。

1週間ほど前、従兄弟が屋根に出てその柿の実をもいで食おうとしたら、運動神経の良い従兄弟にもかかわらず、屋根から転落してしまった。
幸い、下の地面が柔らかく大事なかったが、次の日に従兄弟の弟が全く同じ理由で転落したそうだ。

その後も従兄弟の友人ら3人までが次々とその柿に手を伸ばしたところで転落したそうだ。
おかげで“呪いの柿”はもがれる事なく今日まで枝にぶら下がっている。

俺も見たけど本当に屋根の端からちょっと手を伸ばせば簡単に取れそうな位置にある。
俺と弟は日頃から高い所に登ったり、塀の上で遊んだりしていてバランス感覚には自信があった。

さっそく弟が取ってやる、と言って窓から屋根に乗り出し“呪いの柿”に簡単に手を伸ばした。
しかし次の瞬間、まったく突然に転落してしまった。

俺はこのときピンときた。
その後俺が“呪いの柿”に近づき、そして枝をつかんで横の方に引っ張ってみると、もとの位置からは全く死角になっていた実の裏側にシナンタロ(いら蛾の幼虫)が二匹ついていた。
こいつに刺されると電撃的な痛みに襲われ、ショックで弾かれたようになるのだ。

“呪いの柿”に近づいた者がことごとく転落したのはこれが原因であった。

言うまでもなく一度シナンタロに刺された従兄弟はそれがわかっていたが、知っていながら俺達に“呪いの柿”取りに行かせたのだ。

従兄弟の友人3人も同じように従兄弟にだまされたに違いない。
洒落にならん従兄弟である。